「親も高齢になってきたけど、まだ元気だし、相続の話なんて縁起でもない…」
 そんなふうに思っていませんか?

 でも実際には、「元気なうち」だからこそ、相続の準備ができるのです。
 いざという時に慌てないために、今からできることを知っておくことが大切です。

 今回は、兄弟が複数いて、遺言もまだない…そんなご改定に向けて、「相続の準備、何から手を付ければいいか?」を行政書士の立場から、解説していきます。

1 相続の準備は「争族」を防ぐ一番の方法

 相続の話になると、家族の中がぎくしゃくしそう…という不安、よく聞きます。

 けれど、話し合いを避け続けた結果、
 「遺言がなかったせいで兄弟に大げんか」
 「誰が親の土地を相続するかでもめて数年」…こうしたケースは本当に多いです。

 だからこそ、元気な今のうちに親と話し合い、必要な準備を進めることが、「円満な相続」への第一歩になります。

2 準備①:まずは「親の財産」を見える化する

 最初の一歩は、「親がどんな財産を持っているか」を家族で共有することです。

 財産というと、大げさに聞こえるかもしれませんが、
・預貯金(銀行口座)
・不動産(土地や家)
・株や投資信託
・生命保険
・借金やローンの残り
 などが対象になります。
 これらを一覧にして把握することから始めましょう。

 例えば、親が3つの銀行口座を持っていて、しかもどこになるか分からない…という状態では、亡くなったあと家族は困ります。
 「相続放棄」という選択ができるのは、基本的に3カ月以内です。
 だからこそ、「財産の全体像」を事前に確認しておくことがとても重要なのです。

3 準備②:不動産の名義は「今のうちに確認」しておく

 親が住んでいる家や土地の名義は、誰のものになっていますか?
 「えっ、父親の家なんだから、父親の名義じゃないの?」 …と思って調べたら、亡くなった祖父のまま、ということもあります。

 このような名義が古いままだと、相続手続きが一気に複雑化します。
 しかも、2024年からは「相続登記の義務化」がスタートしました。

 相続で土地を取得したら、3年以内に登記をしないと10万円以下の過料(罰金)の可能性があります。
 だから、家や土地の登記簿を法務局で一度取り寄せ、名義人を確認しておきましょう。

4 準備③:「遺言書」を残してもらう

 いちばん確実で、家族の負担を減らせる方法。
 それが、親に遺言書を残してもらうことです。

 遺言書がない場合、残された家族で遺産分割協議を行い、財産の分け方を話し合う必要があります。

 これが本当に大変です。
 「実家は長男に?いや、売ってわける?誰が固定資産税を払う?」
 といったトラブルになりがちです。

 遺言書には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
 特におすすめなのが、「公正証書遺言」です。
 これは、公証人役場で公証人が内容を確認して作成するもの。
 偽造の心配も少なく、紛争防止効果が高いです。

 費用は数万円~十数万円ほどかかりますが、将来のトラブル防止を考えれば、十分価値があります。

5 準備④:家族で気軽に「相続のこと」を話す

 相続の話題は、どこか重たくて避けがちです。
 でも、「いつかそのうち…」と思っていたら、いざという時には話せなくなっていた、ということもあります。

 だからこそ、普段の会話の中で、
 「この家って誰の名義なの?」
 「お父さんって銀行口座いくつくらいあるの?」といった、ちょっとした話から始めてください。

 重要なのは、家族みんなが「情報を共有する」ことです。
 親だけでなく、兄弟姉妹で話しておくことも大切です。

6 準備⑤:相続で不安なことは専門家に相談を

 相続は、法的な手続きも多く、家族関係の微妙な問題も絡んできます。
 「これは話にくいな…」
 「法律のことはよくわからない…」
 そんな時は、行政書士などの専門家にご相談ください。

 行政書士は、財産目録の作成や遺言書の相談、相続人調査や協議書作成など、相続の入り口からサポートが可能です。

 「うちの場合どうなる?」という個別のケースにも対応できますので、お気軽にご相談いただければと思います。

7 相続準備は「今」が最適なタイミング

 相続は、「その時」が来てからでは遅いこともあります。
 親が元気な今のうちだからこそ、
・財産の把握
・不動産の名義確認
・遺言書の作成
・家族の話し合い
 といった準備を進めておくことで、「ありがとう」で終われる相続につながります。

 相続の話は、未来の家族の安心を作る第一歩。
 ぜひこの機会に、一歩を踏み出してみてください。

     ↓

行政書士下西照美事務所