「相続で実家を引き継いだけれど、自分は戻る予定もない。ただ維持費だけがかかっている…」
そんな悩みを抱えている50代、60代の方は少なくありません。
また、商店街では空き店舗や空家が増え、人通りが減って活気を失いつつあります。イベントを開催しても、根本的な解決にならない。どうにかして外から人を呼び込みたい。そんな声もよく聞かれます。
こうした状況に対する一つの選択肢として注目されているのが、「宿泊施設としての空き家活用」です。
その中でよく聞かれるのが「簡易宿泊所」と「民泊」。
どちらも似たいような言葉ですが、制度も内容も全く異なります。
今回は、その違いを解説しながら、自分の空き家にはどちらが向いているのか、判断のヒントをお届けします。
1 簡易宿泊所と民泊の違い
まず、簡易宿泊所とは、旅館業法の基づく正式な宿泊施設です。
ゲストハウスやカプセルホテル、ホステルなどもこの分類に入ります。
特徴は、365日いつでも営業でき、特別な利用者の制限がないこと。
いわば、「本格的な宿」として認められる存在です。
一方、民泊は住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づいた制度で、空き家や自宅の一部を使って宿泊サービスを提供するもの。
ただし、年間180日までしか営業できないという制限があります。
あくまで「住宅」の延長として認められた宿泊サービスです。
簡単にいえば、簡易宿泊所は「旅館業」、民泊は「住宅活用型の副業」という位置づけになります。
2 設備や準備に求められること
「簡易宿泊所」を始めるには、建築基準法や消防法などに適合した建物である必要があります。
例えは、避難経路の確保、火災報知器や消火器の設置、客室の面積、受付の設置など、求められる条件は多岐にわたります。
さらに、用途地域の確認や、建物の用途変更手続きも必要です。
民泊はそれに比べると条件がやや緩やかですが、それでも事前に住宅としての構造や用途地域を確認する必要があります。
また、住民とのトラブルを防ぐため、ゴミ出しルールや騒音への配慮など、運営面での注意が欠かせません。
3 どちらが自分に向いているのか
本格的に宿泊施設を運営していきたい。観光客や訪問者に長期的に利用してもらい、しっかりと収益を上げたい。
そんな場合は、簡易宿泊所の方が適しています。
とくに、相続した古民家や商店街の空き店舗など、「人の流れを生む拠点」として活用したいと考えるなら、簡易宿泊所は強力な選択肢です。
一方で、空き家の活用はしたいけれど、本業が合ってあまり手がかけられない。短期間だけ貸したい。副収入として考えたい…そんな方には、民泊の方が始めやすいかもしれません。
「とりあえず民泊から始めてみて、軌道に乗ったら簡易宿泊所に切り替える」という考え方もできます。
4 開業までの道のりにも違いがあります
簡易宿泊所を開業するには、保健所や消防署への申請、設備の設置、建築用途の変更など、かなりの準備が必要です。
申請から許可まで3か月以上かかるケースも多く、専門家のサポートが必要になることもあります。
民泊は、オンラインでの届出や管理体制の整備を行えば、比較的短期間で始めることができます。
ただし、年間180日という営業制限があるため、収益の上限は自然と決まってきます。
5 行政書士ができるサポート
空き家を宿泊施設に活用したいけど、どこに相談すればいいか分からない。
行政とのやり取りが難しそう。
そんなとき、行政書士があなたの力になります。
例えば、以下のようなサポートが可能です。
・建築用途や消防設備に関する事前確認
・保健所、消防署への許可申請の書類作成・提出代行
・管理体制や運営ルールの整備
・所有者や相続人との調整に関する相談
・賃貸や契約書など、法的に書面の作成
一人で抱え込まず、専門家に相談してみてください。
宿泊事業は、ただの副業ではなく、「地域に人を呼び込む仕組み」を作ることでもあります。
その第一歩を、行政書士としてサポートいたします。
6 さいごに
空き家は、管理が行き届かなくなると、維持費がかかるだけの「負の資産」になってしまいます。
しかし、視点を変えると、それは人を呼び込むための「地域資源」にもなり得ます。
簡易宿泊所にするのか、民泊として活用するのか。
それぞれの違いを理解した上で、自分や地域に合った形を選ぶことが大切です。
まずは「できるかどうか」ではなく、「どうすればできるか」を一緒に考えてみませんか?
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