「不動産オーナーから物件を一括で借りて、入居者にまた貸しする「サブリース」って、宅建業免許がいるのかな?」
そんな疑問を抱えている方、多いのではないでしょうか。
特に、賃貸管理や不動産投資のビジネスにこれから参入しようという個人事業主や中小企業の方にとって、「宅建業法との関係」や「必要な手続き」は、最初に確認しておきたい重要ポイントです。
この記事では、サブリース事業に宅建業免許が必要かどうかを、法律的にわかりやすく解説します。さらに、最近の法改正や注意点についてもまとめました。
1 結論:サブリース事業に宅建業免許は原則不要
まず結論からお伝えします。
サブリース事業を行うのに、宅建業免許は原則として必要ありません。
理由は、「宅建業」の定義にあります。
宅建業とは?
宅地建物取引業法(宅建業法)では、次のような行為を「宅建業」と定めています(宅建業法2①二)。
⇒「他人が所有する宅地・建物の売買・交換・賃貸借について、代理または媒介を業として行うこと」
つまり、自分の物件ではなく“他人のために”売ったり貸したりする仲介業務が対象です。
一方、サブリースはどうかというと…
・不動産オーナーから物件を一括で「借りる」
・そして、借りた物件を第三者に「また貸し(転貸)する」
というモデルです。
このように、あくまで「自ら貸主」として転貸する仕組みなので、宅建業法の定義にある「代理」や「媒介」には当たりません。
したがって、宅建業免許は不要というわけです。
2 ただし要注意!トラブル続出で法整備も
「じゃあ安心して始められる!」…と思いたいところですが、サブリース事業には別の落とし穴があります。
実は、ここ数年でサブリースをめぐるトラブルが多発し、社会問題となった背景があります。
事例
・「30年家賃保証」と説明されたのに、2年で家賃を下げられた…
・空室だらけの物件を「収益性が高い」と言われて契約してしまった…
・契約内容が不明確で、途中解約で大きな損失が出た…
こうしたトラブルに巻き込まれたのは、オーナー側(貸主)です。
そこで、国土交通省は新たな法律を制定。
それが、2021年6月に全面施行された「賃貸住宅管理業法」です。
3 賃貸住宅管理業法で定められた5つの義務
この法律は、サブリース事業そのものを禁止するものではありません。
むしろ、適切な運営とオーナー保護のためのルールを整備したものです。
特に「サブリース契約にかかわる勧誘や契約」については、次の5つの義務が課されています。
①誇大広告の禁止
→ 実際よりも大げさな収益保証・入居率などの表示は禁止です。
②不当な勧誘の禁止
→虚偽の説明や威圧的な営業トークは禁止されています。
③重要事項説明の義務(書面)
→契約前に、貸主に対して書面で重要事項の説明が必要です。
④契約締結時書面の交付義務
→所定の内容を記載した契約締結時書面を、貸主に必ず渡さなければなりません。
⑤書類の備置き・閲覧義務
→契約内容や業務状況を示す書類を事務所に保管し、貸主の請求があれば見せる義務があります。
これらを守らない場合、業務停止命令や罰則の対象となる可能性もあります。
4 管理戸数が多いなら「登録義務」も
さらに注意すべきポイントがあります。
それは、管理戸数が200戸以上ある場合には、「賃貸住宅管理業」の登録が義務化されていることです。
つまり、サブリース事業をある程度の規模で展開する場合には、宅建業免許ではなくても、別の登録制度の対象となるわけです。
小規模なら任意登録でもよいですが、信頼性確保のために登録する事業者も増えています。
5 まとめ:宅建業ではないが、無規制でもない
ここまでのポイントを整理すると…
項目 | 内容 |
---|---|
宅建業免許の必要性 | 原則不要(代理・媒介ではないため) |
適用される法律 | 賃貸住宅管理業法 |
登録の必要性 | 管理戸数200戸以上なら義務、未満でも任意登録あり |
主な義務 | 誇大広告禁止、重要事項説明、契約締結時書面交付、書類備置きなど |
違反時のリスク | 行政処分や罰則(業務停止命令等) |
6 サブリースを始めるなら「法令順守+説明責任」が鍵
サブリース事業は、不動産活用の一手段として非常に有効です。
ですが、オーナーや入居者との信頼関係の上に成り立つビジネスでもあります。
そのためには、次のような準備が欠かせません。
・広告表現の見直し(「保証」や「収益性」の説明に要注意)
・契約書類・説明資料の整備
・法令・制度の最新情報のチェック
また、業務の信頼性や透明性を高めるには、専門家(行政書士・弁護士・宅建士など)との連携もおすすめです。
7 結論:宅建業免許は不要でも、しっかり準備を!
繰り返しになりますが、サブリース事業そのものには宅建業免許は必要ありません。
ただし、賃貸住宅管理業法という別のルールの下で運営される事業であることを忘れてはいけません。
「免許がいらないから簡単だろう」と考えて始めると、思わぬトラブルや処分の対象になることも…。
ルールを守って、健全で信頼されるサブリース運営を目指しましょう!
↓