最近、実家が空き家になってしまったという相談をよく受けます。
「このまま放っておくのはもったいないし、民泊として活用できないだろうか?」と考えている方も増えています。
特に、地方では観光資源を生かして町おこしに取り組む動きも盛んになっており、空き家を活用した民泊は地域活性化にもつながる方法の一つです。
でも、ここでよく出てくる疑問が一つ。
「親名義のままの空き家を、息子や娘が民泊として活用してもいいの?」
実は、ここがとても大事なポイントなのです。
今回は、「名義が親のままの空き家を民泊として活用できるのか?」について、分かりやすく解説します。
1 親名義の空き家で民泊はできるのか?--結論から言うと…
親から使用の許可を得ていれば、民泊の届出は可能です。
ただし、いくつか注意点があります。
まず、民泊とは住宅民泊事業法(通称「民泊新法」)に基づいて、一般の住宅を観光客などに短期間貸し出す事業のことです。
この法律に基づいて事業を行うには、「住宅宿泊事業」の届出を行う必要があります。
届出にあたっては、住宅の所有者が誰であるかが関係してきます。
つまり、家の名義人が「あなた」ではなく「親」の場合、その家を使って民泊を始めるには、親の同意が必要になります。
2 届出は誰が出すのか?--所有者と事業者は別でもOK
住宅宿泊事業の届出は、「住宅宿泊事業者」が行います。
この住宅宿泊事業者は、住宅の所有者である必要はありません。
つまり、親が家の所有者で、子供が事業者となる場合でも、
・親の承諾があること
・使用権限(使用許可)があること
この2つがあれば、子供が住宅宿泊事業の届出をして、民泊運営をすることは可能です。
届出の際には、親からの「使用承諾書」や「賃貸借契約書」など、使用を認める書類を添付する必要があります。
賃貸借契約書を交わすことで、より形式的に整えるケースもあります。
3 では、名義変更は必要ない?
名義変更、つまり「不動産の所有者を親から子へ変更する」必要があるかというと、必須ではありません。
ただし、次のようなケースでは名義変更(所有権移転登記)を検討してもよいでしょう。
・親が高齢で、判断能力に不安がある
・相続時にトラブルになりそう
・民泊運営を長期的に見据えている
・自分で自由に売却、リフォームをしたい
将来的に相続する予定の家であっても、親が元気なうちに「贈与」や「売買」といった形で名義を移しておけば、あとからスムーズに事業を進めやすくなります。
ただし、贈与税がかかる可能性もあるため、費用負担や税金については慎重に確認する必要があります。
4 「家族だから大丈夫」では済まない?トラブル防止のために
親子の関係であっても、「民泊事業」はれっきとした営利活動です。
後々親が「聞いていない」「そんなに大勢の人を泊めるとは思わなかった」など、感情的なもめごとになることもあります。
ですから、
・使用目的(民泊として使うこと)
・使用期間(何年間、どの程度の頻度で)
・使用料(賃料を払うかどうか)
などをきちんと書面に残しておくことが、非常に大切です。
また、親に認知症などの症状がある場合、そもそも同意の効力が問題なることがあります。
その場合は、「家族信託」や「成年後見制度」の活用が視野に入ってきます。
5 もう一つのポイント--誰がそこに住むの?
住宅宿泊事業法では、住宅の提供者(あなた)が実際にその家に住んでいるかどうかによって、必要な対応が変わります。
・住んでいる場合(居住型):届出だけで運営可能
・住んでいない場合(非居住型):住宅宿泊管理業者への委託が必要
つまり、もし親が住んでいた家に誰も住んでおらず、あなたもそこに住まないまま民泊を始めたい場合には、「住宅宿泊管理業者」と契約して、清掃や宿泊者対応などを委託する必要があります。
これは、法律で定められているルールなので、守らなければ違法となり、指導や業務停止の対象になります。
6 まとめ:名義変更しなくてもOK。ただし注意点あり
・親の空き家を民泊にするには、名義変更は必須ではありません。
・親からの使用承諾があれば、子供が届出をして事業を始めることが可能です。
・書面での契約や同意書の整備が、後のトラブル防止につながります。
・あながたその住宅に住んいない場合は、住宅宿泊管理業者への委託が必要です。
・長期的な視点や相続対策を考えるなら、名義変更を検討してもよいでしょう。
空き家問題と観光需要をうまくつなげる「民泊」。
親の家を有効活用したいと考えているなら、まずは名義や使用権限を整理することから始めましょう。
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