親の死後、実家や田畑などの不動産を相続したけれど――
 「遠方に住んでいて管理できない」
 「使う予定もないし、売りたくても買い手がつかない」
 「固定資産税や草刈り代だけが重荷に…」
 そんな悩みをお持ちではないでしょうか。

 特に地方の山林、農地、古家付き土地などは「売れない」「貸せない」「使わない」の”三重苦”に陥りやすく、相続人にとって大きな悩みのタネです。

 この記事では、こうした土地をどう手放すか、またはどう活用できるのか。
 具体的な制度や選択肢を、表形式も交えながら、分かりやすく解説します。

1 なぜ土地が「売れない」のか?まずは理由を整理

 まず、売却できない原因を整理しましょう。
 以下のような理由が考えられます。

主な売れない理由内容の説明
需要がない人口減少・過疎地域で、そもそも購入希望者がいない
接道義務を満たしていない道路に面しておらず、建築基準法上、建物を建てられない
農地や山林である農地法・森林法などにより売却や転用に制限がある
相続登記が未了相続手続きが終わっておらず、所有者が確定していないため売買ができない
老朽化建物付き建物の解体費がかかるため、買い手がつきにくい

 まずは「なぜ売れないのか?」を客観的に把握することが第一歩です。
 市町村の固定資産課や地元の不動産業者に相談して、客観的な評価をしてもらうのも有効です。

2 放置するとどうなる?土地を所有する責任

 「売れないし、使わないし、まぁ放っておこうか…」
 実はこの「放置」こそがトラブルのもとになります。

放置による主なリスク内容の説明
固定資産税の負担毎年課税され続け、住んでもいないのに支払いが続く
草木の繁茂・害獣被害など近隣住民から苦情がくるケースも
不法投棄・火災などの危険管理者不明の空き地はトラブルの温床になりやすい
相続登記の義務化(2024年4月~)登記未了は10万円以下の過料の対象に

 特に、2024年4月からは相続登記の義務化がスタートしました。
 相続から3年以内に登記をしないと過料(罰金)の対象になるため、放置は危険です。

3 土地を手放す方法3選

 「どうしても不要、手放したい」という場合、以下の方法があります。

方法内容ポイント
① 市町村に無償譲渡条件を満たせば、自治体が引き取ってくれるケースあり受け取り拒否されるケースが多く、事前相談が必須
② 相続土地国庫帰属制度(新制度)一定の条件を満たせば、土地を国に引き取ってもらえる制度手数料がかかるが、確実に手放せる
③ 民間譲渡・寄付NPOや地域団体などへ譲渡・寄付する寄付先の目的やルールに合うかの確認が必要

 特に注目したいのが「②相続土地国庫帰属制度」です。
 2023年4月にスタートした新制度で、いらない土地を手放せる画期的な仕組みとして注目されています。

 相続土地国庫帰属制度の概要

項目内容
対象者相続または遺贈により土地を取得した個人(法人不可)
対象不動産建物のない土地(農地や崖地などは条件付きで可)
必要費用申請手数料1万4,000円/筆+10年分の管理費を納付(例:約20万円)
不適合条件汚染、境界未確定、担保付き、管理困難な土地など

 注意点は「何でも国が引き取ってくれるわけではない」ということ。
 境界があいまいな土地や、ゴミが捨てられている土地などは、申請しても却下されます(→却下要件)。
 また、管理費相当額の負担もあるため、費用と手続きのバランスを検討しましょう。

4 手放せないなら「活用」も選択肢

 売却や譲渡が難しいなら、「活用」して収益化する、地域に貢献するという選択肢もあります。

活用方法内容の説明難易度
月極駐車場アスファルト整備などが必要だが、管理しやすい収益化手段
貸し農園都市部では人気。設備投資や管理体制の構築がカギ
太陽光発電(ソーラー)立地と日照条件が合えば収益性高。設置業者との契約が必要
空き家カフェ・店舗DIYやリノベーションで地域活性化に貢献できる。
シェアスペーステレワークや撮影向けのレンタルスペース。柔軟な用途設定が可能

 どの方法も初期投資や手続きは必要ですが、管理しながら活かすという考え方も重要です。
 また、最近は「空き家バンク」や「地域おこし協力隊」など、自治体主導のマッチング支援も進んでいます。
 行政書士として、地元自治体との連携支援や利活用計画書の作成などのお手伝いも可能です。

5 相続前からできる!「負動産」対策

 実は、最も効果的なのは相続が始まる前からの準備です。

対策項目内容・目的
生前贈与管理・処分を早めに行うことで、負担を軽減できる
不要土地の処分元気なうちに売却・寄付・行政相談を進めておく
任意後見契約の活用認知症に備え、親の名義の土地の管理・処分権限を委任できる
家族信託柔軟な財産管理を可能にする信頼契約

 例えば「任意後見契約」を活用すれば、
 親が将来認知症になった場合にも、あらかじめ指定された後見人(子など)が不動産の処分を円滑に行えます。
 法定後見と異なり、家族に権限をゆだねられる点で安心感があります。

6 あきらめず、まずは行動を

 使い道のない土地を相談しても、あきらめる必要はありません。
 放置せず、知識と制度を生かして「手放す」か「活かす」かを判断することが大切です。

 行政書士は
・相続登記の支援
・国庫帰属制度の申請サポート
・活用アイデアの提案
・地元自治体との調整
 など、幅広くお手伝いできます。

 「相談して困っているけれど、誰に相談したらいいか分からない」
 そんなときは、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

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行政書士下西照美事務所