「親から土地を相続したけど、これって農地なの?」
「畑っぽいけど、もう何年も使っていない」
「家を建てたいのに、農地だとダメだと聞いた…」
相続の相談を受けていると、こうした声を本当によく聞きます。
多くの方が、「農地かどうか」の判断で最初につまずきます。
実は、見た目だけでは判断できません。
草が生えていても農地ではない場合もありますし、逆に、舗装されていても「法律上は農地」というケースもあります。
では、相続した土地が農地かどうか。
まず何を見て、判断すればいいのでしょうか?
この記事では、「最初の一歩」に絞って、順番にわかりやすく説明していきます。
1 最初に見るのは「登記簿の地目」です
いきなり結論です。
まず確認すべきなのは、登記簿に記載されている「地目」です。
地目とは、「その土地が何として登録されているか」を示す項目です。
相続した土地が農地かどうかは、ここを見るのが出発点になります。
2 地目とは?土地の「戸籍」のようなもの
地目(ちもく)とは、法務局に備え付けられている登記簿に記載される、土地の種類を表す区分です。
難しく聞こえますが、
「この土地は、公式には何として扱われていますか?」
それを示すものだと思ってください。
代表的な地目には、次のようなものがあります。
| 地目 | 意味 |
|---|---|
| 田 | 稲を作るための土地 |
| 畑 | 野菜などを作る土地 |
| 宅地 | 家を建てるための土地 |
| 雑種地 | 駐車場、資材置き場など |
| 山林 | 山として使われる土地 |
このうち、「田」、「畑」と記載されていれば、原則として農地です。
3 登記簿の「地目」を必ず確認する(判断基準①)
では、具体的にどう確認するのでしょうか。
方法はシンプルです。
法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得します。
相続登記をした方なら、すでにお手元にあるかもしれません。
そこに、次のような記載があります。
・地目:田
・地目:畑
この場合、法律上は農地と扱われます。
たとえ今、草だらけでもです。
逆に、
・地目:宅地
・地目:雑種地
であれば、原則として農地ではなりません。
ただし、次の例外があることを忘れてはいけません。
農地法では、登記簿の地目だけでなく、「実際の利用状況(現況)」が重視されます。
例えば、次のようなケースです。
・登記簿の地目は「宅地」
・しかし、長年にわたり畑として使っている
・野菜を作り、農地として管理されている
この場合、農業委員会からは
「実質的には農地ですね」
と判断されることがあります。
その結果、住宅を建てる前や売却の前に、農地転用の手続きが必要となることもあります。
「地目が宅地だから大丈夫」
これは、実務ではとても危険な思い込みです。
4 なぜ地目と現況がずれるのか
ここで、「なぜこんなズレが起きるのか?という点を、もう少し具体的に見てみましょう。
理由は一つではありませんが、共通しているのは、土地の使い方が時間とともに変わっているという点です。
例えば、次のようなケースがあります。
・もともと畑だった土地を、分譲地として宅地に地目変更した
・住宅用地として売り出したものの、思うように売れなかった
・空き地のままでは管理が大変なため、草刈り代わりに作物を植えた
・その状態が何年も続き、実態としては「畑」になっている
このような場合、登記簿の地目は「宅地」のままでも、実際の利用状況は農地という状態が生まれます。
また、
・相続後、とりあえず畑として使い続けた
・一時的なつもりで作物を植えたが、そのまま定着した
といったケースも珍しくありません。
農地法は、「登記の表示」よりも農地としての利用実態を守ることを重視します。
そのため、宅地と表示されていても、現況が農地であれば、農業委員会では農地として扱われる可能性があるのです。
このズレを放置したまま、
・売却の話を進める
・住宅の計画を立てる
と、途中で「農地転用が必要です」と、ブレーキがかかることになります。
5 固定資産税の課税明細も参考になる(判断基準②)
次に参考になるのが、固定資産税の納税通知書です。
毎年、市町村から届く「課税明細書」を見てください。
そこに、
・地目:田
・地目:畑
と記載されていれば、自治体も農地として扱っています。
ただし、注意点があります。
税務上の地目と、農地法上の農地は完全には一致しません。
あくまで「参考資料」と考えてください。
最終判断は、農地法に基づく扱いになります。
6 農業委員会等の区域指定を確認する(判断基準③)
地目が田、畑だった場合、次に重要なのが場所です。
農地には、さらに細かな区分があります。
代表的なのが次の3つです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 市街化区域 | 住宅を建てやすいエリア |
| 市街化調整区域 | 原則、家を建てにくいエリア |
| 農用地区域 | 原則、転用できない農地 |
これは、市町村の「農業委員会」や「都市計画課」で確認できます。
同じ農地でも、どの区域にあるかで、転用の難易度が天と地ほど変わります。
7 畑だと思っていたら宅地だったケース(事例①)
60代の男性。
父から相続した土地は、草が生い茂る空き地。
「畑だと思っていた」とのことでしたが、登記簿を確認すると、地目は「宅地」。
この場合、農地法の許可は不要です。すぐに売却の話を進めることができます。
見た目だけで判断していたら、不要な心配を続けることになります。
8 駐車場なのに、地目は「畑」だったケース(事例②)
一方で、こんなケースもあります。
すでに砂利が敷かれ、何年も駐車場として使われている土地。
しかし、登記簿の地目は「畑」のまま。
農地転用の手続きが一切されていませんでした。
この場合、売却も建築も、まず農地転用からになります。
「今さら?」と思われがちですが、法律上は今も農地なのです。
9 迷ったら、次の順番で確認する
最後に、判断の順番を整理します。
① 登記簿の地目(田、畑か)
② 固定資産税の課税明細
③ 市街化区域、農用地区域か
④ 農業委員会での確認
この順番で確認すれば、「農地かどうか」、「次に何をすべきか」が見えてきます。
相続した土地が農地かどうか。
これは、その後の選択肢を大きく左右します。
・売れるのか
・家を建てられるのか
・そもそも転用できるのか
一人で悩まず、早い段階で専門家に相談することが、結果的に時間も費用も抑える近道です。
「この土地、どう扱えばいいのか分からない」
そんな時は、行政書士にご相談ください。
状況を整理し、次の一手を一緒に考えましょう。
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