「うちの母、最近ちょっと物忘れが増えてきたかも…」
「父が倒れて入院。財産管理とか、もしものときが心配」
「子供がいない私たち夫婦、将来の相続ってどうなるの?」
こうした不安や疑問は、誰にでも起こりうるものです。
特に高齢の親を持つ方や、子供のいないご夫婦にとって、「もし判断力がなくなったら」「相続が発生したらどうなるのか」は切実な問題です。
そこで関わってくるのが「後継制度(こうけんせいど)」です。
でも「聞いたことはあるけど、相続とどう関係があるの?」という方が多いのではないでそうか。
この記事では、後見制度とは何か、相続とどうつながっているのか、そして元気なうちにどんな準備ができるのかを、行政書士がわかりやすく解説します。
1 そもそも「後見制度」ってなに?
まず最初に、「後見制度ってなに?」というところから整理しましょう。
後見制度とは、認知症などで判断力が低下した人の代わりに、法律上の手続きや財産管理を行うための制度です。
大きく分けて2種類あります。
種類 | 説明 | 始まるタイミング |
---|---|---|
法定後見 | 家庭裁判所に申し立てて後見人を選任する制度 | 判断力が低下した「あと」 |
任意後見 | 元気なうちに「誰に何を任せるか」を契約しておく制度 | 判断力が低下した「とき」に発効 |
例えば、認知症で通帳の管理ができなくなったときや、施設入所の契約を本人ができなくなったときに、後見人が代理で対応します。
2 「後見人がいないと相続が進まない」ってホント?
相続の場面で、後見制度が必要になるのはこんなときです。
例えば、3人兄弟のうち1人が高齢で認知症。
この状態では、その方を含めた「遺産分割協議」ができません。
なぜなら、法的な契約や意思表示をするには、「判断力(意思能力)」が必要だからです。
その場合、家庭裁判所に申し立てて「法定後見人」を選任しなければ、相続の手続きは一切進みません。
つまり、認知症=相続が止まるという状況が現実に起こります。
さらに注意が必要なのは、次のような点です。
・親族が後見人になれるとは限らない
・家庭裁判所が第三者(弁護士、司法書士など)を選ぶ場合がある
・第三者が選ばれると、相続人の間での柔軟な話し合いが難しくなることも
このように、後見制度と相続は密接に関係しているのです。
3 遺言書があっても安心できない理由
「うちは遺言書があるから大丈夫」と思っていませんか?
もちろん、法的に有効な遺言書があると、多くの場合はスムーズに相続できます。
ですが…
・内容が古くて現在の状況に合っていない
・一部の財産しか記載されていない
・そもそも書いていなかった
といった理由で、最終的に遺産分割協議が必要になるケースも多くあります。
そのとき、相続人の一人でも判断力が低下していれば、やはり後見人の選任が必要となります。
つまり、遺言書だけでは完全に備えきれない可能性があるということです。
4 「任意後見契約」で事前にできる準備
そんなトラブルを防ぐために、注目されているのが「任意後見契約(にんいこうけんけいやく)」です。
これは、元気なうちに「誰かに何をお願いするか」を決めておける制度です。
具体的には、公証役場で契約書(公正諸書)を作成し、本人が判断力を失ったときに発効します。
たとえば…
・銀行や役所の手続きを代わりにしてほしい
・相続が発生したとき、手続きで相続に迷惑をかけたくない
・財産の管理を信頼できる人にお願いしたい
こうした希望を、法律上しっかりと形にしておけるのが大きなメリットです。
5 他にも備えておきたい「財産管理契約」「死後事務委任契約」
後見制度と併用できる仕組みとして、次のような契約もおすすめです。
契約名 | 主な内容 | 備考 |
---|---|---|
財産管理契約 | 通帳の管理、支払い、契約の代行 | 元気なうちから利用可能 |
見守り契約 | 定期的な連絡や訪問で生活の様子を確認 | 将来の後見発効にもスムーズにつながる |
死後事務委任契約 | 死亡後の手続き(火葬、解約など)を依頼 | 親族がいない方に特に有効 |
これらを組み合わせれば、「今から判断力が落ちた後、そして死後まで」トータルで備えることが可能です。
6 後見制度にかかる費用は?
実際に契約をするときの費用は、以下が目安です。
内容 | 費用目安 | 補足 |
---|---|---|
任意後見契約 | 約2万円(公証役場)+専門職報酬 | 後見監督人の選任には家庭裁判所の費用も発生 |
財産管理契約 | 月5,000円〜1万5,000円 | 契約内容により変動 |
死後事務委任契約 | 作成費:1〜3万円程度+実費 | 葬儀・納骨などの費用は別途積立が必要 |
契約の内容やご家族の状況に応じて、一人ひとりに合ったプランをご提案できます
7 後見制度は「万が一」だけでなく「相続の準備」でも活用できる
「親が認知症になったら相続はどうなる?」
「自分が亡くなった後、家族に迷惑をかけたくない」
--そう感じた時点で、すでに準備を始めるベストなタイミングです。
後見制度は「困ってから使う制度」と思われがちですが、実は「元気なうちにこそ活用できる制度」なのです。
特に相続と関係が深いからこそ、事前にしっかりと備えることで、家族の負担を大きく減らすことができます。
行政書士は。任意後見契約や財産管理契約、遺言作成支援などを通して、相続の準備と暮らしの安心をサポートしています。
もし少しでも気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
あなたとご家族の「これから」に寄り添ったご提案をいたします。