「夫に先立たれ、気づけば一人暮らし。」
「年を重ねるごとに、体の調子や物忘れが気になるようになってきた。」
「このまま誰にも迷惑をかけずに、人生を終えられるのだろうか。」
そんなお話を、多くの高齢者の方から伺ってきました。
特に子供がいないご夫婦や、身寄りのない方にとっては、いざという時に誰に助けを求めたらいいのかという不安が付きまといます。
元気な今だからこそ、将来の備えについて考えてみませんか。
今回は、そんな一人暮らしの老後に備えるために、知っておきたい制度や手続きについて、分かりやすくお話していきます。
1 一人で老後を迎えるということ
老後の不安は人それぞれですが、大きく分けて「生活のこと」「お金のこと」「判断力が落ちた時のこと」「亡くなった後のこと」に集約されます。
例えば、病気やけがで入院した時に手続きや支払いをどうするか、認知症になった時に財産や通帳は誰が管理するのか、亡くなった後の葬儀やお墓はどうなるのか。
考え出すときりがありませんが、どれも現実的な問題です。
誰かに頼りたいけれど、親しい親族がいない。
行政サービスも全てをカバーしてくれるわけではありません。
そんな時に役に立つのが、法律で定められた仕組みを使う方法です。
2 任意後見制度という安心の仕組み
「任意後見制度」は、元気なうちに「将来判断能力が落ちたとき、この人に助けてもらう」という契約を交わしておく制度です。
認知症などで判断力が衰えたあとでも、その契約に基づいて信頼できる人が生活のサポートや財産の管理をしてくれるようになります。
例えば、今はしっかりしていても、将来、通帳の管理が難しくなったり、施設に入る手続きを自分でできなくなったりしたとき。
その時のために、今のうちに信頼できる人と契約しておけば、自分の代わりに手続きをしてもらえます。
契約は公正証書という公的な形で残すので、後からトラブルになる心配も少なくなります。
3 死後の手続きも任せられる「死後事務委任契約」
自分が亡くなったとのことまでお願いできる制度もあります。
「死後事務委任契約」といって、葬儀の手配や火葬、役所への届け出、遺品整理やお墓のことまで、生前に信頼できる人にお願いする契約です。
「亡くなった後なんて関係ない」と思う方もいるかもしれませんが、実は死後の手続きは意外と多く、残された人に負担をかけてしまうことがあります。
親族がいない場合は、そもそも誰もやってくれない可能性もあります。
この契約をしておけば、万が一誰にも気づかれずに亡くなったとしても、依頼した人がしっかりと対応してくれるので安心です。
4 組み合わせて備えるという考え方
これらの制度は、ひとつだけで完結するものではありません。実際にはいくつかの制度を組み合わせて使う方が多くいらっしゃいます。以下の表をご覧ください。
契約名 | 目的 | 使うタイミング | 主な内容 |
---|---|---|---|
見守り契約 | 日常の安否確認 | 元気なうちから | 定期訪問や電話による見守り |
財産管理信託契約 | 資産を決まった目的で使ってもらう | 任意後見発効前から可能 | 毎月の生活費の引き出し、医療費の支払いなど |
任意後見契約 | 判断力が低下した後の生活・財産管理 | 判断力がなくなった後 | 代筆、財産管理、契約行為の代行 |
死後事務委任契約 | 死後の手続き | 本人が亡くなった後 | 葬儀、火葬、納骨、役所への届け出など |
これらを組み合わせることで、「元気なうち」から「判断力が落ちた後」そして「亡くなった後」まで、すべてを安心して任せることができます。
5 気になる費用の話
「安心は欲しいけど、費用が高いのでは?」というご相談もよくいただきます。
たしかに、制度の利用には一定の費用が掛かります。
ですが、内容を知ると「それだけの価値はある」と納得される方が多いです。費用の目安は以下のとおりです。
項目 | 目安費用(概算) | 備考 |
---|---|---|
見守り契約 | 月額5,000円〜 | 業者や専門職によって差があります |
任意後見契約作成費用 | 約2万円(公証役場)+報酬 | 契約書作成、立ち合いなど含む |
死後事務委任契約作成費用 | 約1〜3万円(公証役場)+報酬 | 火葬・納骨等の内容により異なる |
専門職の後見人報酬 | 月額1〜2万円前後 | 生活内容や業務量により調整されます |
※あくまで目安です。地域や契約内容により上下します。気になる方はお気軽にご相談ください。
6 今からでも間に合います。自分の人生を自分で決めるために
「まだ自分は大丈夫」と思っているうちが、実は一番の備え時です。
任意後見契約は、本人に判断能力があるうちにしか結べません。認知症が進んでからでは、どんなに希望があっても契約はできないのです。
だからこそ、今のうちに「誰に何をお願いしておくか」をしっかり決めておくことが大切です。
自分らしく生きるために、自分の将来は自分で設計しておく。それが、安心して暮らすための第一歩です。
行政書士は、こうした契約の作成や制度のご説明、公証役場との手続きまで、幅広くお願いできます。
無理に制度を勧めるのではなく、あなたの気持ちに寄り添いながら、一番合った方法を一緒に考えていきます。
7 備えあれば、憂いなし
老後の生活は不安がつきもの。
でも、正しい知識と制度を使えば、「一人でも安心して生きていく道」がきっと見つかります。
あなたが「自分らしく、安心して最後まで生きる」ために、今できる準備を一緒に始めてみませんか?
まずは話すことから。お気軽にご相談ください。
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