「高齢になってきたし、そろそろ行政の支援を受けられると思って市役所に相談したけど、対象外と言われてしまった」
「家族もいないし、これから先が心配。でも何の制度も使えないなんて…」
そんな不安の声を、高齢者やそのご家族からよく耳にします。
行政サービスはとてもありがたい仕組みです。
でも、使える条件が厳しかったり、そもそも対象外だったりすることも少なくありません。
「本当に困っているのに制度が使えない」という「隙間」が確かに存在しています。
では、その隙間をどう埋めるか。
実は、民間の契約や法制度を使えば、その部分を補えるケースがたくさんあります。
今回は、そうした「制度の隙間」を埋める方法について、行政書士の立場から分かりやすくお伝えします。
1 制度はあるけど、使えないこともある
「体が弱ってきた」「物忘れが増えてきた」「一人暮らしで将来が不安」
--こうした理由で、市役所や社会福祉協議会に相談に行っても、「まだ元気だから制度の対象ではありません」と言われてしまうことがあります。
実際によくある制度の一部を見てみましょう。
制度名 | 実施主体 | 対象者の基準 | 内容 | 利用できない例 |
---|---|---|---|---|
介護保険サービス | 市区町村 | 要介護・要支援の認定を受けた人 | ヘルパー、通所介護、福祉用具など | 認定を受けていない人、軽度な衰え |
福祉サービス利用援助事業 | 社会福祉協議会 | 判断能力に不安のある高齢者・障がい者 | 金銭管理、福祉手続き同行など | 健常な高齢者、判断力がある人 |
どちらもありがたい制度ではありますが、利用には明確な基準があり、条件を満たさないと使えません。
つまり、困っている人すべてが支援を受けられるわけではないという現実があります。
2 だからこそ注目した「民間の備え」
行政の制度では対応しきれない部分を埋めるために、今注目されているのが、「任意後見契約」、「死後事務委任契約」、「見守り契約」などの民間制度です。
これらは、行政では対応できな場面を、自分で信頼できる人に任せる仕組みです。
契約の相手は、家族だけでなく、行政書士などの専門職でも可能です。
「頼れる家族がいない」「周囲に迷惑をかけたくない」
--そう思う方にこそ、ぜひ知っておいていただきたい制度です。
3 「任意後継制度」で将来の備えを
「任意後見制度(にんいこうけんせいど)」は、今は元気だけれど、将来の判断力低下に備えて、支援をお願いする契約です。
契約は公証役場で「公正証書」として作成し、家庭裁判所の監督の下で発効されるため、法的にも安心です。
例えば、こんな場面で利用されます。
・通帳管理や医療費の支払い
・介護施設の契約や入所手続き
・各種行政手続きの代行
家族がいない方でも、行政書士や司法書士などの専門家と契約することが可能です。
4 「死後のこと」も生前に契約できる
「もし自分が亡くなったとき、誰が葬儀をするの?」「お墓は?役所への届け出は?」
--そんな不安を抱えている方も少なくありません。
「死後事務委任契約」は、亡くなった後の事務手続きを依頼する契約です。
内容はとても幅広く、以下のようなことが依頼できます。
死後事務で任せられる内容 |
---|
葬儀・火葬の手配 |
お墓や納骨の対応 |
役所への死亡届提出 |
公共料金・携帯電話の解約 |
自宅の片づけ・明け渡しなど |
親族がいなくても、あらかじめ依頼しておけば、行政では対応しきれない「死後の事務」まで安心して任せられます。
5 「見守り契約」や「財産管理契約」で今の不安もサポート
「今すでに生活に不安があるけど、判断力はあるし、行政の制度は使えない」
--そんな方には、「見守り契約」や「財産管理契約」があります。
・見守り契約:月に1回の電話や訪問で安否を確認
・財産管理契約:銀行や役所への手続きを任せる
これらを組み合わせることで、「今から」「認知症になったら」「亡くなった後」まで、切れ目なくサポート体制を作ることが可能です。
6 気になる費用は?
民間契約の費用は以下のとおりです。
行政書士などに依頼することで、自分に合った形にカスタマイズできます。
契約内容 | 費用目安 | 備考 |
---|---|---|
任意後見契約 | 約2万円(公証役場)+専門家報酬 | 報酬は契約内容に応じ変動 |
死後事務委任契約 | 約1〜3万円(公証役場)+事務実費 | 葬儀費用などは別途積立が必要 |
見守り契約 | 月5,000円〜10,000円 | 訪問回数により変動あり |
財産管理契約 | 月5,000円〜1万5,000円 | 通帳管理・支払い代行など |
7 「使えない制度」ではなく「使える契約」で備える
行政の制度は必要な人を守るために存在しますが、条件に当てはまらなければ支援が届かないこともあります。
しかし、そんな時こそ「民間契約」を活用すれば、自分らしい備えができます。
特に、家族がいない方や親族と疎遠な方には、今から準備しておくことが大きな安心につながります。
行政書士は、こうした契約の設計から、公正証書の作成、死後のサポートまで、一貫して支援できます。
「まだ元気だけど、将来が不安」
「子供に頼れないから、何か準備しておきたい」
そんな方は、どうぞお気軽にご相談ください。
あなたの「これから」を、安心して歩むお手伝いをいたします。
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