「農地を相続したけど、農業はやらないし、家でも建てようかな…」
「でも、農地ってそのままじゃ家が建てられないって聞いた」
「そもそも、何をどうすればいいの?」
こんな疑問や不安を持っている方、多いのではないでしょうか。
実は、農地というのは、勝手に家を建てたり、駐車場にしたりできない「特別な土地」です。
農地として使っていた土地を、別の用途に変えるには、「農地転用(のうちてんよう)」という手続きが必要です。
今回は、その農地転用の流れと必要書類について、できるだけやさしく、わかりやすくお伝えします。
1 そもそも農地転用とは?
まずは基本から。
農地転用とは、農地を「住宅」「駐車場」「事務所」「資材置き場」など、農業以外の用途に使うことです。
農地は、食料を安定的に確保するために保護されている土地です。
そのため、農地法という法律で「勝手に農地以外に使ってはダメ」と決まっています。
つまり、農地転用とは、「農地としての役割をやめて、別の目的で使うことを県や市町村に許可してもらう」手続きなのです。
2 農地転用には2に種類ある
農地転用には、大きく分けて2つのケースがあります。
①自分で農地を使う場合(自己転用)
→家を建てる、駐車場にする、店舗にするなど
②他人に売ったり貸したりする場合(権利移動転用)
→住宅会社に売る、第三者に貸して事業用地にするなど
この2つでは、提出先や審査内容が少し違いますが、基本的な流れは似ています。
どちらにせよ「許可が必要」という点では共通しています。
3 農地転用の流れはこうなっています
ざっくり言うと、農地転用は次のような流れで進みます。
①事前調査、打ち合わせ
②必要書類の収集
③農業委員会への申請
④現地調査、審査
⑤許可通知の受け取り
⑥登記や工事など実際の転用開始
順番に見ていきましょう。
①事前調査、打ち合わせ
最初にやるべきことは、「この土地がそもそも転用できる場所なのか?」を調べることです。
例えば、土地が「市街化調整区域(しがいかちょうせいくいき)」の場合、そもそも住宅が建てられないこともあります。
また、農地の種類によっても難易度が違います。
「第1種農地(生産性の高い農地)」や「農業用地区域内の農地(青地)」などは、原則として転用できません。
この段階では、市役所や農業委員会に相談したり、行政書士に依頼することで、転用の可能性をチェックできます。
②必要書類の収集
農地転用の申請には、様々な書類が必要です。
例えば、こんなものがあります。
・転用目的の説明書(住宅用なら建物の概要など)
・土地の登記事項証明書(登記簿謄本)
・公図(こうず)や位置図(地図)
・資金計画や工事スケジュールの概要
・土地の測量図や境界確認書
・賃借人があれば同意書
内容によっては、さらに多くの書類が求められます。
特に市街化調整区域の場合は、開発許可や都市計画法の確認も必要になるため、書類はさらに増えます。
③農業委員会への申請
必要な書類がそろったら、農業委員会へ申請します。
申請は毎月1回など、締め切りが決まっている自治体が多いので、事前に日程を確認しておきましょう。
提出後、農業委員会が内容をチェックし、必要であれば補正(書類の修正や追加)を求められることもあります。
④現地調査、審査
農業委員会や関係部署の職員が、実際に現地を見に来て調査します。
周囲の土地との関係、排水・道路状況、土地の状態などがチェックされます。
また、「本当にその用途で使うのか?」を確認するためのヒアリングや資料提出もあります。
⑤許可通知の受け取り
審査を経て、許可が下りるまでには1~2か月程度かかるのが一般的です。
(ただし、内容や地域によって異なります)
無事に許可が下りると、「農地転用許可書」が発行されます。
これでようやく、農地を宅地などに転用するスタートラインに立てます。
⑥登記や工事など実際の転用開始
許可を得たら、土地の地目変更(登記)を行い、建物の建築や工事へと進みます。
地目とは、登記簿上の「土地の使い道」のこと。
農地のままでは家は建てられませんので、例えば「宅地」へ変更する必要があります。
4 よくある質問Q&A
Q.転用せずに使ったらどうなるの?
A.許可なしに農地を宅地や駐車場に変えると、「無断転用」として法律違反になります。
最悪の場合、原状回復(元に戻す)命令や罰金が科されることもあります。
Q.自分で申請できるの?
A. できますが、書類の数が多く、役所とのやり取りも複雑です。
不慣れな方にはハードルが高く、行政書士などの専門家に依頼するケースが一般的です。
5 農地転用は段取りと準備がカギ
農地転用は、一見するとハードルが高く感じるかもしれません。
でも、正しい流れを知り、必要な準備をすれば、決して不可能な手続きではありません。
ポイントは、以下のとおりです。
・農地転用には許可が必要。勝手な使用はNG
・市街化調整区域や農地区分によって、許可の難易度が違う
・書類は多く、専門的な知識も必要なので、専門家への相談が安心
農地は大切な資産です。
だからこそ、「どう使えるのか」をしっかり見極めて、有効活用していきましょう。
行政書士として、あなたの農地転用を一からサポートいたします。
どうぞお気軽にご相談ください。
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