「親から実家を相続したけれど、誰も住む予定がない」
 「解体するにはお金がかかるし、放っておくのも不安」
 「空き家をうまく活用できないだろうか?」

 そんな悩みを抱えている方が、近年とても増えています。
 特に50~60代の方々から「民泊として使えないか?」というご相談をいただくことが多くなってきました。

 では、実際に相続した家を「民泊」として使うには、どんな許可や手続きが必要なのでしょうか?
 この記事では、行政書士の立場から、できるだけやさしく、わかりやすく解説します。

1 住宅宿泊事業法に基づく「届出」が必要です

 民泊という言葉は広く使われていますが、法律上の「民泊」は住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)に基づくものを指します。

 この制度では、都道府県等に「届出」を行い、住宅の一部または全部を有料で宿泊させることが認められます。
 つまり、「民泊=届出制」です。

 旅館業法に基づく営業(ホテル、旅館など)とは別の仕組みですので、間違えないようにしましょう。
 ただし、届出とはいえ、必要な書類や設備条件は多く、準備には一定の時間と労力がかかります。

2 民泊を始めるための基本条件

 民泊を始めるためには、以下の基本条件を満たしていることが必要です。
・年間180日以内の営業であること
・宿泊場所が住宅であること(人が住める状態)
・消防設備が法律に合っていること
・地域(用途地域)によっては禁止されていないこと

 この中でも、特に注意が必要なのが「用途地域」と「消防法令への適合」です。

 例えば、住宅街の中には民泊が認められていないエリアもあります。
 また、火災警報器や避難経路が整備されていないと、届出は受理されません。

3 相続した実家でも、すぐ使えるとは限らない

 「空き家ならすぐ使えるのでは?」と思われがちですが、実はそう簡単ではありません。

 例えば、以下のような問題がよく見られます。
・相続登記が済んでいない
・建物の老朽化が進み、安全性に問題がある
・水回りや玄関の設備が古く、宿泊者向けに整備が必要
・消防設備が設置されていない
・用途地域が民泊に不適合

 これらの点を一つずつ確認し、整備・修繕していく必要があります。
 そのためには、行政や消防署、建築士、そして行政書士などの専門家と連携することが重要です。

4 必要な書類と手続きの流れ

 民泊の届出に必要な書類は、10点以上に及びます。
 主なものを挙げると、
・身分証明書(市町村長の証明書)
・建物の登記簿謄本(所有者確認)
・建物の図面(間取りや配置)
・消防法令適合通知書(消防署から交付)
・管理業務を委託する場合の契約書

 これらをそろえて「民泊制度ポータルサイト」から電子申請を行います。
 申請後、内容審査があり、要件を満たせば晴れて届出が完了し、営業可能となります。

5 届出にかかる費用と時間の目安

 届出自体に申請料はかかりません
 ただし、準備には一定のコストがかかります。おおよその目安は次のとおりです。
・消防設備設置費用:10万円~30万円
・建物の修繕費、改修費:10万円~数十万円
・書類取得費用:数千円程度
・専門家(行政書士など)への報酬:10万円~20万円前後

 申請から営業開始までの期間は、早くて1~2週間程度。
 内容に問題があった場合や、工事・修繕が必要な場合は数カ月かかることもあります。

6 民泊を通じた空き家活用のメリット

 手続きや準備は少し手間がかかりますが、それでも民泊には次のような利点があります。
・建物を活用しながら維持管理できる
・家賃収入とは別に、短期宿泊による収益が得られる
・周辺地域への人の流れが生まれ、商店街などの経済に貢献できる
・相続した家を「地域資源」として再活用できる

 特に、観光地や帰省客が多い地域、またはワーケーション先として注目される地域では、一定の需要が見込めます。

7 行政書士は「最初の一歩」からお手伝いをします

 民泊を始めるには、法律、建築、消防、地域の条例など、様々なルールを理解し、適切な準備を整える必要があります。

 「どこから手を付けていいか分からない」「そもそもこの家でできるのか?」と悩まれる方も多いでしょう。

 行政書士は、そうした方々の伴走者です。
 相続登記の確認から、届出書類の作成、消防署や自治体との連絡調整まで、必要な手続きをサポートいたします。

 また、民泊を行うには、住宅宿泊事業者がその住宅に実際に居住していることが原則となります。

 もし居住していない場合は、国に登録された住宅宿泊管理業者に管理業務を委託することが義務付けられています。
 これは、トラブル対応や衛生管理、宿泊者の安全確保のために必要な仕組みです。

 こうした要件も含め、「この家で民泊ができるかどうか」「どのように管理体制を整えるか」といったご相談にも、丁寧に対応いたします。

 もし相続した実家の活用に迷っているなら、民泊という選択肢を検討してみませんか?
 地域の空き家が、新しい人の流れをつくり、まちに元気を取り戻すきっかけになるかもしれません。

 お気軽にご相談ください。あなたの空き家を、地域の未来につなぐお手伝いをいたします。

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行政書士下西照美事務所