宅建業免許を取得するには、宅建士(宅地建物取引士)の存在が必須です。
 とはいえ、実際に宅建士の資格を持っていない方が、「自分でも宅建業を始められるのか?」と不安に思われることは少なくありません。
 この記事では、宅建士がなぜ必要なのか、何人必要か、そしてどのタイミングで用意すればよいのかを解説します。

1 宅建士が必要な理由と法的根拠

 宅建業法では、免許を持って宅地や建物の売買、賃貸の取引を行う際に、
・重要事項の説明
・重要事項説明書への記名
・契約書への記名

 といった重要な業務を宅建士にしか行わせてはならないと定められています。

 したがって、事務所ごとに少なくとも1名の「専任の宅建士」確保していなければ、宅建業免許の申請が認められず、免許を取得することができません。

2 宅建士は何人必要?兼任できる?

 宅建業法第31条の3に基づき、「専任の宅建士」を5人以下の従業員に対して1人以上配置することが義務付けられています。

 たとえば、従業員が6人であれば、2人以上の宅建士が必要です。

 また、「専任の宅建士」は以下のような条件を満たす必要があります。
・宅建士証を有効に保有している
・宅建業者の事務所に常勤している(他に職業を持たない)
・他の事務所との兼任不可(個人事業主の兼業は特に注意)

 つまり、「資格を持っているだけ」では足りず、事務所に常勤し、取引業務に携わる体制であることが求められます。

3 宅建士はいつまでに確保すべき?

 宅建業免許の申請時点で、「専任の宅建士の氏名、宅建士証の写し、雇用関係書類等」を提出する必要があります。

 つまり、免許申請前までに宅建士を確保しておく必要があるということです。

 見込みや予定では認められず、実際に雇用契約などにより、専任、常勤で事務所に勤務している宅建士が確保されている必要があります。

4 「まだ見つからない」場合の対応策

 「宅建士が見つからない…」という方にとっては、免許取得の最大のハードルとも言えます。対策としては以下のような方法があります。
・宅建士資格を持つ知人、親族に協力を依頼する
・ハローワークや専門求人サイトで募集をかける
・宅建士の登録者を紹介するマッチングサービスを活用する
・自身で宅建士試験にチャレンジする(毎年10月試験)

 なお、「専任性」が求められるため、形だけの名義貸しなどは不正行為に該当します。

 虚偽申請が発覚した場合、免許の取り消しなどの処分対象になりますので、正当な雇用形態で確保することが大前提です。

5 早めの準備でスムーズな免許取得を

 宅建業免許を取得するためには、「宅建士の確保」が大前提になります。

 特に事務所要件や人的要件と並び、審査のポイントとなる部分です。

 申請を検討されている方は、事前に専任の宅建士を確保できるかどうかを見極め、準備を進めておくことが重要です。

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行政書士下西照美事務所