「できれば家の一部を改装して、カフェを開きたい」
 「空き家を使って、コストを抑えて飲食店を始められないかな?」
 こうしたご相談、最近とても増えています。

 特に脱サラして飲食店を目指す方や、飲食業界経験者の方にとっては、物件の取得の初期コストを抑えられる「自宅」や「空き家」の活用は大きな魅力ですよね。

 でも、そこでよく出る疑問がこれです。
 「自宅で飲食店って、本当にできるの?」
 「空き家って、すぐに使えるの?許可はとれるの?」

 結論から言うと、条件を満たせば可能です。
 ただし、保健所の許可や用途地域(都市計画法)など、クリアしなければならないポイントがいくつかあります。

 この記事では、自宅や空き家で飲食店を始めるための条件や注意点を、なるべくわかりやすく、具体例を交えて解説します。

1 自宅、空き家でも飲食店営業は可能?まずは「食品衛生法」の確認から

 飲食店を営業するには、「飲食店営業許可」という保健所の許可が必要です。
 この許可は、建物が店舗ビルでも、自宅でも、空き家でも関係ありません。
 大事なのは、建物の中の厨房や設備が、法律の「施設基準」を満たしているかです。

 例えは、
・2槽以上のシンク(流し台)
・お湯が出る給湯設備(40℃以上)
・手洗い場(調理用とトイレ用が別々)
・清掃しやすい壁や床の素材
・食材、食器、ゴミの保管場所

 などが整っていれば、場所が自宅でも許可は下りる可能性があります。
 ただし、あとで説明するように、自宅と店舗をはっきり分けておくことが求められます。

2 「自宅営業」で注意すべき3つのポイント

 (1)住宅部分と店舗部分は「はっきり分ける」
 自宅のキッチンで調理し、リビングで接客…
 このスタイルでは、原則として営業許可は下りません。

 なぜなら、私生活と営業が混在すると、衛生面でのリスクが高くなるからです。
 →玄関が別、厨房が独立している、など「完全分離」が基本。
  難しい場合でも、ドアやパーテーションで明確に区切る必要があります。

 (2)衛生面の設備が基準を満たしているか確認
 家庭用キッチンでは、基準を満たせないことが多いです。
 例えば、
・シンクが1槽しかない
・お湯が出ない
・作業スペースが狭い

 といった点があると、改修工事が必要になります。
 →許可を取る前に、厨房の図面を作って保健所に相談するのがおススメです。

 (3)近隣トラブルを防ぐ配慮も必要
 自宅で営業すると、においや騒音、車の出入りなどでご近所に迷惑がかかることも。
 「地域住民との関係性」も、成功する自宅飲食店のカギです。

3 空き家を使う場合の注意点とチェックリスト

 空き家をリノベーションしてカフェや定食屋をやりたい。
 そんな夢を持つ方も多いですよね。
 実際に可能ですが、以下のポイントに注意が必要です。

 【建物の「用途地域」を確認】
 都市計画法により、エリアによっては飲食店営業ができない地域もあります。
 →市区町村の都市計画課などで、用途地域を確認しましょう。
 「第一種低層住居専用地域」は原則NG、「近隣商業地域」などはOKです。

4 自宅や空き家で飲食店を始めた事例紹介

 (1)古民家を改装して週末カフェに
 築50年の実家を活用し、週末だけの予約制カフェを開業。
 内装をDIYで整え、設備だけプロに依頼してコストを抑えました。
 →食洗器付き2槽シンクや業務用冷蔵庫を導入して、許可を取得。

 (2)自宅ガレージをラーメン屋に改装
 脱サラ後、ガレージを改修してカウンター式の小さなラーメン店をオープン。
 →住宅部分とは壁でしっかり分離。入口も別にしたことでスムーズに許可が下りました。

5 「低コスト開業」の第一歩は、現地と制度の確認から

 飲食業経験がある方こそ、初期投資を抑えて、地元密着で店を持ちたいと考える方が多いです。
 その手段として、自宅や空き家を活用するのはとても有効です。

 しかし、設置基準、地域ルール、工事の可否など、調べるべきポイントは多め。
 まずは、以下のステップを踏んでみましょう。

☑ 自宅や空き家の図面を描く
☑ 保健所に事前相談する
☑ 用途地域や建物のルールを確認する
☑ 近隣との関係や騒音対策も考える

 そして、準備や手続きに不安がある場合は、行政書士にご相談ください。
 あなたの夢の一歩を、確実に、スムーズに形にするお手伝いをします。

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行政書士下西照美事務所