これから不動産業を始めたいけど、
 「宅建業免許って、個人でも取れるの?」
 「法人で取った方が有利なの?」
 こんな疑問をお持ちの方、多いのではないでしょうか。

 宅建業免許は、個人でも法人でも取得できます。
 でも、それぞれにメリット、デメリットがあり、どちらが適しているかはあなたのビジネスプラン次第。
 この記事では、「個人」と「法人」、どちらで宅建業免許を取るべきかを、やさしく丁寧に解説します。

1 将来的に規模を拡大したいなら「法人」、小規模で始めるなら「個人」

 最初にざっくりまとめると、以下のようになります。

比較項目個人法人
設立の手間、コスト少ない(ほぼ不要)多い(登録免許税や登記手続き)
税金所得税(累進課税)法人税(利益に応じて)
社会的信用やや弱い高い
経費計上の幅やや狭い広い
事業の継続性事業主の死亡で終了会社が存続する限り継続可能

 次の章から、順にそれぞれの特徴を解説していきます。

2 宅建業免許とは?個人でも法人でも取得可能

(1)宅建業免許とは
 まず、「宅建業免許って何?」」という方のために。
 宅建業免許とは、正式には「宅地建物取引業の免許」といい、不動産の売買や賃貸の仲介をビジネスとして行うために必要な許可です。
 法律上、これがないと報酬を受ける形で不動産取引を行うことはできません(宅建業法第3条)。

(2)誰が取るの?
 この免許は、個人(フリーランス)でも、法人(株式会社や合同会社など)でも取得できます。
 つまり、「一人でやる」「会社を作ってやる」のどちらでもOK。
 では、それぞれどんなメリット、デメリットがあるのでしょうか?

3 【個人で取得】初期費用が安く、スモールスタートに最適

(1)要点まとめ
 ・法人設立の費用が不要
 ・開業がシンプルで速い
 ・ただし、信用面や事業継続性にやや不安あり

(2)メリット
 個人での取得は、コストと手間が圧倒的に少ないです。
 例えば、法人設立するには最低でも20万円程度の費用(登録免許税や定款認証料など)がかかりますが、個人ならこれがほぼゼロ円で済みます。
 また、手続きもシンプル。税務署への開業届を出せばすぐに事業を始められます。
 「まずは副業から」「1人で始めたい」という方にはピッタリです。

(3)デメリット
 一方、こんな点に注意が必要です。
 ・社会的信用がやや低い(取引先に法人格を求められることも)
 ・節税の幅が狭い(所得が上がると税率も高くなる)
 ・代表者が亡くなると免許も失効する(事業継続にリスク)

 例えば、不動産取引では「契約相手が法人であるかどうか」を気にする顧客や業者もいます。
 また、将来的に従業員を雇いたい場合、法人の方が管理しやすくなります。

4 【法人で取得】信用力と将来性は抜群。だが設立の手間はかかる

(1)要点まとめ
 ・初期費用はかかるが、社会的信用や事業継続性は高い
 ・税制面でも柔軟な対応が可能
 ・事業拡大を視野に入れるなら法人が有利

(2)メリット
 法人の大きな強みは、信用力と節税の柔軟性です。
 ・社会的信用が高い:銀行融資、取引先との契約で有利
 ・節税の選択肢が多い:利益の分散や役員報酬調整が可能
 ・人を雇いやすい:給与計算や労務管理の仕組みが整っている
 ・相続に強い:代表が変わっても免許は継続可能

 例えば、兄弟や子どものに不動産会社を引き継ぎたいと考えているなら、法人化しておくと非常にスムーズです。

(3)デメリット
 ・設立にコストと手間がかかる(登記、定款、資本金など)
 ・毎年の決算、申告など、管理業務が煩雑
 ・法人登記後でないと免許申請できない(事前準備が必要)

 つまり、本格的に不動産業をやる覚悟がある方向けです。

5 どちらで始めるべき?判断のためのチェックポイント

 では、あなたはどちらで始めるべきか?
 以下のような基準で考えてみてください。

質問個人向き法人向き
初期費用を抑えたい
まず1人で副業としてやりたい
銀行融資や提携を考えている
将来、従業員を雇いたい
家族に事業を継がせたい

 自分がどういうスタートを切りたいのか、そして数年後どうなっていたいか。
 この2点を基準に判断すると失敗しにくいです。

6 迷ったら、個人で始めて法人化もアリ!

 「今はまだ大きくできるかわからない…」
 そんな方は、まずは個人で始めて、軌道に乗ってから法人化するという選択肢もあります。
 実際、多くの方がこの流れでステップアップしています。

 税務署への「青色申告」届出をしておけば、個人事業でもしっかり利益管理が可能です。
 法人化するタイミングは、年商が1,000万円を超えるあたりが目安。
 この頃には、消費税の納税義務や節税の必要性も出てきます。

(注意)個人で宅建免許を取得してから後に法人化する場合、法人名義で新たに免許を作り直すことになります(名義変更はできません)。

7 宅建業免許の取得方法は、あなたの「未来像」で決まる

 宅建業免許は、「個人」でも「法人」でも取れます。
 大事なのは、あなたがどんな不動産ビジネスを目指しているかです。
 ・小さく始めたい→個人でOK
 ・信用や拡大を重視→最初から法人もアリ!

 迷った時は、専門家(行政書士)に相談してみてください。

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行政書士下西照美事務所