年を重ねると、誰もが一度は考えることがあります。
「このまま一人で暮らしていけるだろうか?」
「病気になったり、認知症になった時、誰に助けてもらえるのだろう?」
そして、身寄りがない、もしくは子供がいない方にとっては、なおさら不安に感じるはずです。
私たち行政書士のもとにも、こういったご相談はよく寄せられます。
「任意後見制度って、家族がいないと使えないんでしょう?」
「頼れる人がいないんですが、将来が心配で…」
結論から言えば、身寄りがなくても任意後見制度は利用できます。
しかも、それが今、実際に多くの方に選ばれているのです。
この記事では、その仕組みや実際の利用例について、分かりやすく解説します。
1 任意後見制度とは?
「任意後見制度(にんいこうけんせいど)」とは、将来判断力が落ちたときに備えて、あらかじめ誰かに生活の支援や財産管理をお願いしておく制度です。
例えば、今はまだ元気でも、将来認知症になってしまうかもしれない。
そんな時、自分の代わりに銀行や役所の手続きをしてくれる人を、前もって契約で決めておく――それが任意後見です。
【契約の基準と流れ】
制度を利用するには、以下のような流れになります。
手続きのステップ | 内容 |
---|---|
① 元気なうちに相手を選ぶ | 任せたい人(=後見人)を自分で選ぶ |
② 公正証書で契約を結ぶ | 公証役場で正式な契約書を作成する |
③ 将来、判断力が衰えたら発効 | 医師の診断をもとに家庭裁判所が認める |
④ 契約した相手が後見人として活動 | 日常生活や財産管理のサポートを開始 |
契約には公証役場を利用するため、公的に認められた契約となり、トラブルが起きにくいのも特徴です。
【事例:70代女性、身寄りなしでも制度を活用】
鹿児島県にお住いの70代女性。ご主人に先立たれ、子供も親族もいません。
将来のことが心配になり、行政書士に相談したところ、任意後見制度を勧められました。
信頼できる行政書士と「任意後見契約」と「死後事務委任契約(亡くなった後の手続きをお願いする契約)」を結びました。
その数年後、軽度の認知症と診断され、任意後見が発効。
行政書士が、施設入所の手続きや医療費の支払いなどを代行し、本人は安心して暮らし続けています。
2 誰に頼めばいい?
「頼れる家族がいないんです」という方もご安心ください。
任意後見契約では、後見人を家族に限る必要はありません。
信頼できる友人、知人、あるいは行政書士などの専門職に依頼することができます。
最近では、行政書士や司法書士、社会福祉士などが「専門職後見人」として契約するケースが増えています。
日々の生活をサポートするというよりは、主に財産管理や手続き面での支援を担当します。
また、行政書士はご本人の意思を尊重しながら、丁寧にヒアリングを行い、公正証書の作成や手続きの準備までのトータルでサポートすることができます。
3 任意後見と併せて使える制度もあります
任意後見制度だけではカバーしきれない「安否確認」や「死後の手続き」については、別の契約で対応することができます。
以下の表をご覧ください。
制度名 | 内容 | 利用目的 |
---|---|---|
見守り契約 | 日常の安否確認 | 月1回の訪問・連絡など |
任意後見契約 | 判断能力が落ちたときの支援 | 財産管理・契約手続きなど |
死後事務委任契約 | 亡くなった後の事務を依頼 | 葬儀、火葬、納骨、役所手続きなど |
これらを組み合わせれば、生前・晩年・死後までのサポート体制を整えることができます。
例えば「毎月の安否確認」→「任意後見」→「死後の手続きまで一任」…といった流れです。
4 費用はどれくらいかかる?
制度利用にかかる費用は、以下のようになります。
項目 | 目安費用(概算) | 補足 |
---|---|---|
見守り契約作成 | 10,000~20,000円程度 | 契約内容により変動あり |
見守り月額報酬 | 月額5,000~10,000円 | 訪問回数により変動あり |
任意後見契約作成 | 約2万円(公証役場)+専門家報酬 | 一般的に5万~15万円程度 |
後見人活動の報酬 | 月額2万円~ | 財産額・業務内容により調整 |
死後事務委任契約 | 約1~3万円(公証役場)+事務費用 | 葬儀費用などは事前積立が必要 |
もちろん、契約内容や地域、依頼先によって異なります。
まずは行政書士に相談し、ご自身にあったプランを立てることをおすすめします。
5 一人でも、備えがあれば安心です
身寄りがなくても、任意後見制度は利用できます。
むしろ、頼れる家族がいない方こそ、この制度の対象者です。
「自分の将来は、自分の意志で決めておきたい」
「迷惑をかけずに、静かに人生を終えたい」
そう思うなら、元気な今こそが準備のチャンスです。
行政書士は、制度の説明だけでなく、契約書の作成、公証役場の手続き、そして見守りや死後事務まで、トータルであなたを支えます。
将来の自分のために、一歩踏み出してみませんか?
まずはお気軽にご相談ください。
あなたの人生設計を一緒に考えていきましょう。
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