「父が亡くなったけど、遺言書がない…」
 「兄弟で集まっても、誰がどの財産を相続するか決められずに困っている」
 「登記や銀行の手続きも進まないし、何から手を付けていいか分からない」

 こうしたお悩みを抱えている方は、意外とおいものです。

 特に、兄弟だけが相続人になるケースでは、「遺言がない」というだけで手続きが複雑になり、話し合いが難航しがちです。

 この記事では、行政書士の視点から、遺言がない場合に兄弟で相続を進める方法をやさしく解説していきます。

1 遺言がなければ、相続人全員で話し合いが必要です

 まず知っておきたいのは、遺言がない相続では、法律に基づいた手続き=法定相続が出発点になるということです。

 例えば父親が亡くなり、母親はすでに他界している場合。
 子どもたち、つまり兄弟だけが相続人になります。

 この時、「誰がどの財産を相続するか」は、法律だけでは決められません。

 そのため、「相続人全員で話し合い(=遺産分割協議)」をして、分け方を決める必要があります。

 ここでまとまった内容を「遺産分割協議書」という形にして残します。

2 協議書を作るには「財産の中身」と「相続人」が明確でなければ作れません

 「とりあえず協議書を作ろう」と言っても、
・何が遺産なのか?(家、土地、預金、保険など)
・誰が本当に相続人なのか?(異母兄弟がいる場合など)

 これらがはっきりしていなければ、話し合いは進められません。
 そのため、協議書の作成前には必ず次のような準備が必要です。

①財産調査(遺産の目録作成)
→固定資産税の名寄台帳、預金の残高証明、車、株式などを洗い出します。
 場合によっては、借金や保証債務などの「マイナスの財産」も調べる必要があります。

②相続人調査(戸籍収集)
→被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得し、相続人を確定します。
 途中で本籍地が変わっていた場合や、離婚・再婚があった場合は、複数の役所に請求が必要になることもあります。

 これらの調査を正確に行って初めて、「誰が何を相続するか」の話し合いが始められるのです。

3 実際の進め方と注意点を確認しておきましょう

 遺言がない相続では、協議内容を文書にまとめて「遺産分割協議書」を作成します。
 そして、これを使って不動産の登記や銀行の解約を進めることになります。

 この協議書には、次のようなルールがあります。
・相続人全員が参加していること(1人でも欠けたら無効)
・全員の実印と印鑑証明書を添付すること
・財産の内容(不動産や預金)を正確に記載すること

【例】
・父親が亡くなり、長男、次男、三男の3人が相続人
・自宅の土地と建物は長男が相続、預金は3人で均等に分けるという内容で合意
・協議書に3人が署名捺印し、印鑑証明書を添付
・この協議書を使って、不動産の名義変更と、預金の相続手続きを実施

4 兄弟だけの相続で、争いがおこりやすい場面とは?

 兄弟の相続では、感情的な対立が表面化しやすい傾向があります。

 例えば以下のようなケースです。
・「長男だから家をもらうのが当然」と主張されて納得できない
・親の介護をしていたことを理由に、財産を多く要求される
・遠方に住んでいて、情報が入ってこないまま話が進んでいた

 こうした状況で、公平で冷静な話し合いを続けるのは難しいこともあります。

 そこで、行政書士などの専門家が間に入り、
・客観的な資料をもとに
・法律の枠組みに沿った提案を行う
 ことで、トラブルを防ぎながら、スムーズに手続きを進めることができます。

5 相続登記は義務化されました。放置はリスクです

 2024年4月から、相続によって不動産を取得した場合、「3年以内に登記をしないと過料(罰金)」が科される可能性がある制度が始まりました。

 不動産が共有のまま放置されていると、
・将来的に売却できない
・相続人が増えて、権利関係が複雑化する
・いざ登記しようと思っても書類が足りない
 といったリスクが増していきます。

 その意味でも、協議書を早めに作成し、登記まで済ませることは、相続後の安心につながります。

6 戸籍や財産目録を整え、冷静な協議を

 遺言がない相続では、兄弟同士の合意がすべてのカギになります。

 そして、その前提として、
・被相続人の出生から死亡までの戸籍
・財産内容を正確に把握した「財産目録」
 が必要です。

 これらの準備を1人で行うのは、想像以上に大変です。
 書類の不備や漏れがあると、手続きは進まず、最提出が必要になることも珍しくありません。

 だからこそ、相続手続きのスタート段階から、行政書士に依頼するメリットは大きいのです。
・相続人や財産の調査から、協議書の作成までトータルでサポート
・必要書類を過不足なく揃えるプロの視点
・中立的な立場で、円満な話し合いを後押し

 「うちは大丈夫だと思っていいたけど、いざ始めたら複雑だった」
 そんな声を何度も聞いてきました。

 少しでも不安があれば、ぜひ早めにご相談ください。
 あなたとご家族の円満な相続を、行政書士がしっかりと支えます。

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行政書士下西照美事務所