「せっかく実家を相続したけど、空き家のままじゃもったいない」
 「いっそ民泊にして活用したいけど、営業できる日数が限られているって本当?」
 「180日って聞いたけど、それって年間の半分だけってこと?」

 民泊に興味をもたれた方なら、一度は「営業日数の制限」について耳にしたことがあるのではないでしょうか。

 特にこれから民泊を始めたい方、相続した家の有効活用を検討している50代、60代の方、地域活性化のために民泊導入を考える商店街の皆さまにとって、この「180日ルール」は避けて通れないテーマです。

 この記事では、「年間180日までしか営業できないって本当?」「それを超えたら違法なの?」という疑問に、行政書士の立場からわかりやすくお答えしていきます。

1 住宅宿泊事業法では「年間180日まで」の営業制限があります

 民泊にはいくつかの制度がありますが、「住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)」に基づいて営業する場合、その住宅は1年間で最大180日までしか宿泊提供できません。

 この制度の背景には、周辺住民とのトラブル防止や地域の住環境保全などがあり、「住宅はあくまで住宅として使うべきであって、過度な商用利用は控えてほしい」という考えが根底にあります。

 では、そもそもこの「住宅宿泊事業法」とは何か?もう少し掘り下げてみましょう。

2 民泊新法って何?どういう人が使える制度?

 「民泊新法」は、2018年6月に施行された比較的新しい法律で、正式には「住宅宿泊事業法」といいます。

 この法律に基づいて届出をすることで、一般の住宅を有料で宿泊施設として利用することが可能になります。

 対象となるのは、次のような住宅です。
・持ち家の空き家
・相続した実家(使っていない)
・現在住んでいる家の一部(1階だけなど)

 つまり、ホテルや旅館のような専用施設ではなく、「普通の住宅」を使って人を泊めることができる制度です。

 ただし、条件がいくつかあり、その一つが「年間180日まで」という営業日数の制限です。

3 180日って、どう数えるの?カレンダーで数えてOK?

 はい、原則としてカレンダー上で「宿泊者が実際に泊まった日数」で数えます。

 単に「予約を受け付けた日」や「物件を空けていた日」ではなく、「実際に誰かが泊まった日」を1日とカウントします。

 例えば、2025年の1月~12月の間に延べ150泊あったとしたら、まだ30日分の余裕があることになります。

 ただし、180泊を一人で泊まり続けてもいいですし、複数の宿泊者が同じ日に泊まっても、その日は「1日」として数えます。

 ここで注意したいのは、「180日を超えたらどうするのか?」という点です。

4 180日を超えて営業すると違法?罰則はあるの?

 結論から言うと、180日を超えて営業するのは違法です。
 民泊新法では、この上限を超えて宿泊を提供することは認められていません。

 違反が発覚すると、以下のような処分が下されることがあります。
・行政からの営業停止命令
・行政からの事業の廃止命令
・悪質な場合は罰金や刑事告発

 特に複数回の違反や、地域の苦情が多い場合には、行政が厳しく対応する傾向があります。
 「バレなければいい」では済まされないので、営業日数は必ず正しく把握・管理することが必要です。

5 なぜ180日までなの?背景には住環境への配慮がある

 この「180日」という日数制限は、政府が「住宅は本来、住むためのもの」という前提を重視しているためです。

 住民が安心して暮らせるように、商用利用に一定の歯止めをかけているということです。

 民泊を通じて地域に活気を与えることは大事ですが、住民との共存も非常に重要です。
 そのため、過度な利用を増えぎながら、住宅としての性質を保つ目的で「年間180日まで」と制限されています。

6 じゃあ、180日以上営業したい場合はどうすればいいの?

 「空き家をフル稼働させたい」「180日ではもったいない」という方もいらっしゃるかもしれません。
 その場合、住宅宿泊事業法ではなく、旅館業法に基づく許可取得が必要になります。
 ただし、旅館業法の許可を取るには、建築基準法や消防法、設備要件が厳しく、住宅を旅館として転用するには大規模な改修が必要になることもあります。

 つまり、「住宅のままで営業できる代わりに、日数に制限がある」というのが民泊新法の仕組みです。
 180日以上の営業を希望する場合は、法的な切り替え(許可取得)が必要になることを覚えておいてください。

7 営業日数の管理方法は?どうやって数えたらいいの?

 届出をすると、宿泊実績を記録し、報告する義務があります。
 1年間の営業日数が180日以内であることを、自分でしっかり管理しなければなりません。
 この管理は手作業でも可能ですが、最近では「民泊管理ソフト(クラウドツール)」などを活用する方が増えています。

 行政から突然調査が入っても大丈夫なように、宿泊名簿やカレンダー記録を正確に残しておくことが大切です。

8 無理なく続けられる運営が大切です

 180日という制限は、最初は「少ない」と感じるかもしれません。
 しかし、民泊をきっかけに空き家が再活用され、街に人が流れ、商店街が元気を取り戻すなら、それは十分に価値のある取組です。

 民泊は地域の未来につながる選択肢です。
 その分、ルールを守って、継続的に運営することが求められます。

 営業日数の管理、制度の正しい理解、地域との調和…
 そうしたポイントを抑えるためにも、行政書士は心強いパートナーになれます。

 「180日ルールを踏まえて、どこまでできるか?」
 「うちの家は民泊に向いているのか?」

 そうしたご相談も含めて、ぜひお気軽にお問い合わせください。
 空き家の悩みを、地域のチャンスに変える第一歩を一緒に考えていきましょう。

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行政書士下西照美事務所