「親の飲食店をそのまま継ぎたい」
「長年働いていたお店を譲り受けて営業を続けたい」
「法人を引継いで営業も継続するつもりだけど、許可はそのままでいいの?」
こういった場面で出てくるのが「飲食店の営業許可って、引継げるの?」という疑問です。
実は、食品衛生法には「営業許可の承継」という制度があります。
条件に合えば、新たに許可を取り直すことなく、前の営業者の許可を引継ぐことができます。
今回は、営業許可の「承継(名義変更)」の仕組みと手続きの流れ、注意すべきポイントを分かりやすく解説します。
1 「営業許可の承継」ってどういうこと?
まず結論から。
飲食店営業許可は、本来は営業者本人に対して発行されるものです。
ただし、以下のような事情で営業者が変わった場合は、「営業許可の地位」をそのまま引き継ぐこと(=承継)が認められています。
この仕組みは、食品衛生法第56条に規定されています。
2 営業許可の承継が認められるケース
営業許可の承継ができるのは、次のようなケースです。
承継理由 | 承継する人 | 承継可否 |
---|---|---|
営業の譲渡 | 譲り受けた人 | 〇 |
相続(死亡) | 相続人 | 〇 |
法人の合併 | 合併後の法人 | 〇 |
法人の分割 | 営業を承継した法人 | 〇 |
例えば、家族経営の飲食店を子どもが引継ぐ場合や、法人ごと譲渡される場合などがこれに当たります。
3 承継に必要な手続きと期限
営業許可の承継は、保健所へ「地位承継届」を添付書類と併せて提出することで手続きできます。
手続き項目 | 内容 |
---|---|
提出書類 | 地位承継届、承継理由を証する書類(契約書・戸籍など)、飲食店営業許可書(原本) |
提出期限 | 承継後30日以内(遅滞なく届出) |
提出先 | 店舗所在地を管轄する保健所 |
手数料 | 無料(ただし自治体により異なる場合あり) |
※「承継理由を証する書類」とは、譲渡契約書の写し、法定相続情報一覧と相続人全員の同意書、法人の登記事項証明書等が該当します。
また保健所では、店舗の状態や設備が許可当時と変わっていないか、基準を満たしているかを現場確認することになります(承継後6か月以内)。
4 承継できないケース
営業許可の承継ができるのは「営業そのものが引継がれている」と認められる場合に限ります。
以下のようなケースでは、新規に営業許可を取り直す必要があります。
NGケース | 理由 |
---|---|
居ぬき物件を借りて新たに営業する | 許可の承継ではなく、まったくの新規営業となるため |
前の営業者と無関係な第三者 | 営業の継続性が認められないため |
設備が大幅に変更されている | 許可条件が変更されるため |
したがって、承継が認められるかどうかは、事業の継続性が明確かどうかがポイントになります。
5 スムーズな承継のために必要な準備
営業許可の承継手続きでは、以下の点を事前に確認しておくとスムーズです。
・許可証に記載された内容(営業者名、施設住所、業種など)
・設備や施設の現状が許可取得当時から変更されていないか
・必要書類がそろっているか(営業譲渡契約書、戸籍謄本など)
特に、施設の構造変更を伴う場合は、承継ではなく新規許可が必要になることがあります。
事前に保健所に相談しておくのが安心です。
6 行政書士に依頼するメリット
営業許可の承継手続きは、一般の方でも行えますが、次のような場面には行政書士のサポートを活用することで安心、確実に進められます。
・複雑な相続、法人合併による承継
・書類の準備や記載方法に不安がある
・保健所とのやりとりが苦手
・設備図面の変更や衛生管理の書類も必要になりそう
行政書士は、法的根拠と手続きの実務に精通していますので、スムーズな開業・承継をサポートできます。
7 承継できるのは限られたケースだけ。迷ったらまずは保健所へ相談を
飲食店の営業許可は、誰かから「譲ってもらう」ことはできませんが、一定の条件を満たせば「許可の承継(名義変更)」が可能です。
重要なのは、営業そのものが事業として継続しているかどうか。
形式上の「店を引継ぐ」だけでは承継できないケースもありますので、まずは保健所に相談することをおすすめします。
手続きに不安がある場合は、行政書士にご相談ください。スムーズな承継と早期の営業再開をしっかりサポートします。
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