「農地を相続したけど、農業を続けるつもりはない」
 「この土地、宅地にして誰かに貸したい」
 「売って資金にしたい」

 そんな時に調べてみると、出てくるのが「農地転用」や「農地法」の文字。
 ところがさらに調べていくと、「3条許可」「4条許可」「5条許可」など、数字がついた言葉がたくさん出てきて混乱する…

 そんな経験、ありませんか?

 この記事では、「3条」「4条」「5条」の違いを分かりやすく整理しながら、自分のケースではどれが当てはまるかを判断できるよう、シンプルに解説していきます。

1 まずは整理 数字は「農地法の条文番号」

 「3条?4条?5条?なんで数字がついてるの?」
 実はこれ、農地法(のうちほう)という法律の中の条文番号のことなんです。

 つまり、「農地をどう扱うか」によって、どの条文を根拠に手続きをするかが変わってくる、というわけです。

 ざっくりまとめるとこうなります。

条文何をする時?農地のまま?転用する?
3条農地を売ったり貸したりするとき(農業の人へ)〇(農地のまま)
4条自分で農地を住宅や駐車場などに変えるとき
5条農地を他人に売って、その人が住宅などに使うとき

 それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

2 3条許可「農地を農地として売ったり貸したりしたいとき」

 要点:農地は農地のまま。農業をする人に引き継ぐだけの時に必要

 まず「3条許可」は、農地を「農地のまま」使う人に譲るときに必要な手続きです。
 例えば、
・自分は農業をやめるので、近所の農家さんに畑を売りたい
・息子が新たに就農するので、田んぼを貸したい

 こんな時は、農地法第3条の許可が必要になります。
 この許可は、「農業をきちんと継続できる人か?」という点が審査されます。
 農地を受け取る人が、農業に従事していないと、許可は下りません。

 つまり、「農地は、農業をやる人にしか引き継げない」というのが基本方針なんです。

3 4条許可「農地を自分で転用したいとき」

 要点:所有はそのまま。自分の農地を、住宅や駐車場などの別の用途に使いたいときに必要

 次に「4条許可」は、自分の持っている農地を、自分で宅地などに変えるときに必要です。
 例えば、
・相続した農地に、自分の家を建てたい
・農業をやめたので、自分で駐車場にしたい

 このようなケースでは、農地法第4条に基づく転用許可が必要です。
 ポイントは、「所有者はそのまま」ということ。

 つまり、誰にも売ったり貸したりせず、自分で用途を変えるだけです。

 この時、農地が「どこにあるか(市街化区域かどうか)」によって、届出で済む場合と許可が必要な場合があります。

 例えば、市街化区域内であれば「届出」でOK。
 市街化調整区域や農用地区域だと「許可」が必要になります。

4 5条許可「農地を他人に売って、宅地などに変えるとき」

 要点:所有も変わるし、用途も変わる。農地を宅地にしたい場合のほとんどがコレ

 最後は「5条許可」。
 これは、農地を他人に売ったり貸したりして、その人が宅地や駐車場などに転用する場合に必要な手続きです。

 例えば、
・相続した農地を不動産会社に売って、住宅地にしてもらう
・農地を貸して、その人が資材置き場として使う

 このように、権利(所有者や借主)が変わる+農地以外に使うという2つの動きがある場合は、5条の手続きになります。

 一般的に、「農地を手放したい」「宅地にして売りたい」というご相談の多くは、この5条に当てはまります。

 注意点として、5条許可は転用目的が明確でないと許可が下りません。
 「とりあえず売って、買った人がどう使うかは知らない」では許可されないこともあります。

5 市街化区域と調整区域で大きく変わる

 ここまで「3条」「4条」「5条」の違いを見てきましたが、もう一つ大事な視点があります。

 それは、農地が「どの都市計画区域にあるか」です。
・市街化区域 → 原則、届出でOK(簡易)
・市街化調整区域 → 原則、許可が必要(厳しい)
・農用地区域内(青地) → 原則、転用不可

 例えば、同じ「4条のケース」でも、市街化区域なら届け出だけで済みますが、市街化調整区域では審査が厳しくなります。

 つまり、どの条文に当てはまるかだけでなく、土地の場所によっても、難易度が大きく変わるのです。

6 よくある誤解と注意点

 「農地って、勝手に宅地にできると思ってた」
 「とりあえず売れば、あとは相手が手続きしてくれんでしょ?」

 こうした誤解から、知らずに無断転用してしまう人もいます。

 農地は法律で強く守られており、無断で転用すると処分や罰則の対象になります。
 最悪の場合、土地を元に戻すように指導されたり、罰金が科されたりすることも。

 だからこそ、「自分のケースはどの条文に当てはまるのか?」をきちんと見極めることが、とても重要なのです。

7 3条、4条、5条は「何をどうしたいか」で選ばれる

 農地法における3条、4条、5条の違いを、もう一度まとめます。

・3条許可:農地のまま、農業をやる人に譲る → 所有は変わる、用途は変わらない
・4条許可:自分の農地を自分で転用 → 所有者は変わらない、用途は変わる
・5条許可:農地を他人に譲って、その人が転用 → 所有も用途も変わる

 あなたが「農地をどう使いたいのか」「誰が使うのか」によって、手続きが決まってきます。

 「自分の農地がどれに当てはまるのか分からない」
 「そもそも、転用できる土地なの?」
 「何から準備したらいいの?」

 そんな時は、行政書士にご相談ください。

 農地の現状を確認し、手続きの種類、必要な書類、見込まれる期間などを丁寧にご案内いたします。

 農地の活用は、一歩間違えると大きなトラブルにもなりかねません。
 だからこそ、最初の一歩を間違えないよう、ぜひ専門家を頼ってください。

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行政書士下西照美事務所