家族を任意後見人にできる?親族に頼む場合の注意点

家族を任意後見人にできる?親族に頼む場合の注意点

 「任意後見人って、家族でもなれるの?」
 「専門家じゃないとだめなのでは?」
 「身内に頼むと、あとでもめないか心配…」

 こんなご相談をよくいただきます。

 任意後見とは、元気なうちに「判断力が落ちたときに、代わりに手続きをしてくれる人」を自分で選んでおく契約です。 選んだ人を「任意後見人」と呼びます。

 家族に頼むことは、もちろんできます。 ただ、家族ならではの注意点もあります。 この記事では、それを順番に見ていきます。

1 家族でも任意後見人になれる

 結論です。法律で決められた「なれない人」でなければ、家族でも知人でも任意後見人になれます。

 日本公証人連合会も、本人が信頼できる人なら誰でも任意後見人にできると説明しています。 子、兄弟姉妹、甥・姪などの親族や、知人でもかまいません。 特別な資格もいりません。

 ただし、法律ではふさわしくない人も決められています。 たとえば、次のような人です。

任意後見人にふさわしくない人例
本人と裁判で争ったことがある人本人を訴えた甥
上記の人の配偶者や親・子などその甥の妻や子
不正な行為や、ひどく問題のある行いがある人本人のお金を勝手に使ったことがある親族

 こうした人を選んでいると、家庭裁判所が監督する人を選ばず、契約が始まりません。 「誰でもいい」わけではないので、注意しましょう。

2 家族に頼むよいところ

 気持ちをくみ取りやすく、毎月の報酬をおさえられるのが大きな魅力です。

 家族に頼む主なよいところは、次の2つです。

 1つ目は、本人の好みや暮らしぶりをよく知っていることです。 法律でも、任意後見人は本人の意思を大切にし、心や体の状態、暮らしの様子に気を配るよう決められています。 「母は人の多い施設が苦手」といったことまで知っている家族は、心強い存在です。

 2つ目は、報酬を自由に決められることです。 任意後見人への報酬は、契約で決めます。 家族なら、無報酬にすることもできます。

項目家族に頼む専門家に頼む
本人の気持ちのくみ取り得意話を聞いて対応
任意後見人への報酬無報酬にもできる契約で決める(毎月かかる)
手続きの慣れ慣れていないことが多い慣れている

3 家族でも「チェック役」は必ずつく

 家族が任意後見人になっても、家庭裁判所が選ぶチェック役がつきます。

 任意後見が始まるのは、判断力が落ちて、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選んだときです。 任意後見監督人とは、任意後見人の仕事ぶりをチェックする人です。

 任意後見監督人の主な役目は次のとおりです。

役目中身
仕事のチェック任意後見人の仕事を見守る
家庭裁判所への報告定期的に報告する
本人の代わり任意後見人と本人の利害がぶつかるとき、本人の側に立つ

 任意後見人の配偶者や親・子、兄弟姉妹は、任意後見監督人になれません。 つまり、長女が任意後見人なら、その夫や子は任意後見監督人になれないということです。

 任意後見監督人への報酬は家庭裁判所が決めます。 家族が無報酬で引き受けても、こちらの報酬はかかります。 大阪家庭裁判所の目安では、管理する財産が5,000万円以下なら月1万〜2万円です。

4 注意点① 遺産の話し合いで「代わりができない」

 家族ならではの落とし穴が、相続の場面で起きます。

 本人と任意後見人の利害がぶつかる場面では、任意後見人は本人の代わりになれません。 これを「利益相反(りえきそうはん)」といいます。 片方が得をすると、もう片方が損をする関係のことです。

 例えば、父が亡くなり、母と長男が相続人になったとします。 母の任意後見人が長男だと、長男は「自分の取り分」と「母の取り分」を1人で決めることになります。 長男が多くもらえば、母の取り分は減ります。

 そこで、この場合は長男は母の代わりができません。任意後見監督人が母の側に立って、遺産の話し合いに加わります(任意後見人のしおり_千葉家庭裁判所)。

 「家族に頼めば、相続の手続きも全部まかせられる」とは限らないのです。

5 注意点② 「年齢」と「ほかの家族の目」

 頼む人の年齢と、ほかの家族の気持ちも考えておきましょう。

 まず、年齢です。 80歳の夫が78歳の妻に頼むと、妻のほうが先に判断力を落とすこともあります。 任意後見が始まるのは、何年も先かもしれません。 長く引き受けられる人かどうかを考えておきましょう。

 次に、ほかの家族の目です。 たとえば、長女だけが任意後見人になると、ほかのきょうだいが「お金を勝手に使っていないか」と疑うことがあります。

 もめごとを防ぐには、次のような工夫が役立ちます。

工夫中身
報酬を契約書に書く無報酬か、月いくらかをはっきりさせる
記録を残す通帳や領収書をきちんと保管する
家族に伝えておく誰に頼んだかを、ほかの家族にも話しておく

 任意後見監督人は、3か月に1回ほど任意後見人に報告を求めることが多いとされています。 日ごろから記録を残しておくと、報告もスムーズです。

6 困ったときに「やめる」「代える」方法

 任意後見が始まる前なら、比較的かんたんに契約をやめられます。

 始まる前と始まったあとでは、やめ方が違います。

時期やめ方
始まる前本人か引き受けた人が、いつでもやめられる(公証人の認証を受けた書面が必要)
始まったあと正当な理由があり、家庭裁判所が認めたときだけやめられる

 始まったあとに任意後見人が不正をした場合は、家庭裁判所がその人を解任(役目から外すこと)できます。 本人や親族、任意後見監督人などが、家庭裁判所に求めることができます。

 なお、2026年6月に成立した改正法では、「1人目がだめなら2人目に」という予備の任意後見人を決められるようになります。 契約の一部だけをやめるしくみもできます。 施行は、公布から2年6か月以内の予定です。 それまでは今のルールで扱われます。

まとめ

 家族も、任意後見人になれます。 気持ちをくみ取りやすく、報酬もおさえられるのが魅力です。

 ただし、任意後見監督人は必ずつき、その報酬もかかります。 相続の場面では、家族が本人の代わりをできないこともあります。 年齢や、ほかの家族の気持ちにも配慮しておきましょう。

 「うちの家族に頼んで大丈夫?」「誰に頼むのがいい?」と迷ったら、~お気軽にご相談ください。

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「行政書士下西照美事務所」

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下西照美

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