行政サービスで断られた…任意後見で頼れる支援とは?

行政サービスで断られた…任意後見で頼れる支援とは?

 〜役所に「それはできません」と言われたときの次の一手〜

 「役所に相談したのに、うちではできませんと言われた」
 「社会福祉協議会のサービスを使おうとしたら、利用できないと言われた」
 「入院のとき、保証人がいないと困ると言われた」

 こんな経験はありませんか。

 行政や福祉の窓口は、とても頼りになる存在です。 でも、できることには「線引き」があります。 その線の外側を、元気なうちから自分で埋めておく方法があります。それが任意後見です。

 この記事では、行政サービスでできることとできないこと、そして任意後見で頼れる支援をやさしく整理します。

1 なぜ行政サービスで「断られる」の?

 先に結論です。行政の窓口は「相談」や「つなぐこと」が中心です。あなたに代わって契約したり、お金を管理したりすることはできません。

 例えば、地域包括支援センターです。 高齢者の暮らしの「よろず相談窓口」で、介護や生活の困りごとを幅広く受け付けてくれます。

 ただ、あなたに代わって次のようなことはしてくれません。

・銀行で預金を下ろす
・老人ホームの入居契約にサインする
・自宅を売る手続きをする

 これらは、ご本人か、法律上の代理人にしかできないことだからです。

 つまり、「断られた」のは冷たくされたからではありません。 制度の役割が違うのです。

2 公的な支援は、どこまで頼れる?

 公的な支援は、それぞれ「使える条件」と「できる範囲」が決まっています。

 主な支援を比べてみましょう。

支援どんな支援?利用するうえでの壁
地域包括支援センター介護・生活の総合相談代わりに契約したり、お金を管理したりはできない
日常生活自立支援事業
(社会福祉協議会)
日々のお金の出し入れや書類の預かり本人に契約内容を理解する力が必要
市町村長による後見の申立て身寄りのない人のために、市区町村長が家庭裁判所へ申し立てる判断能力が落ちた後の対応で、代理人を自分では選べない

 市町村長による申立ては、決して珍しいものではありません。 2025年(令和7年)の成年後見の申立てのうち、約23.7%が市区町村長によるものでした。 本人による申立て(約24.8%)に次いで多い数字です。

 身寄りのない方が増えている、ということでもあります。

3 「日常生活自立支援事業」で断られる理由

 この事業は「契約を理解できる人」が対象です。判断能力が落ちすぎていると利用できません。

 日常生活自立支援事業とは、社会福祉協議会(地域の福祉を支える民間団体)が行うサービスです。 判断に少し不安がある方の、日々のお金の管理などを手伝ってくれます。

 利用の条件は、おおむね次の2つです。

・判断能力が十分ではないこと
・それでも、このサービスの契約内容は理解できること

 料金は地域によって違います。 たとえば鹿児島県鹿屋市では1回1,200円、宮崎県都城市では1回1,400円です。

 ここが落とし穴です。 「もう少し様子を見てから」と待っているうちに判断能力が落ちると、契約そのものができなくなります。 「まだ早い」と「もう遅い」の間は、思っているより短いのです。

4 任意後見なら、何を頼れる?

 結論です。任意後見なら、行政ができない「代わりに契約する」「お金を管理する」を、あなたが選んだ人に任せられます。

 任意後見とは、元気なうちに「将来の代理人」と「任せる内容」を契約で決めておく制度です。 契約は公証役場で、公正証書(公証人という法律の専門家が作る信用度の高い書類)にして結びます。

 効力が始まるのは、判断能力が落ちた後です。 家庭裁判所が「任意後見監督人」(代理人の仕事ぶりをチェックする人)を選んだときにスタートします。

 任意後見で任せられることの例は次のとおりです。

行政サービスでは難しいこと任意後見で任せられること
預金の払い戻しや解約代理人が銀行で手続きできる
老人ホームの入居契約代理人が本人に代わって契約できる
介護サービスの契約・支払い代理人が契約し、本人のお金から支払える
年金や公共料金の管理代理人がまとめて管理できる
自宅の売却代理人が手続きできる(契約で任せた場合)

 いちばんの強みは、代理人を自分で選べることです。 信頼できる姪や友人、または専門家に頼むこともできます。

5 任意後見でも「できないこと」がある

 任意後見人は万能ではありません。足りない部分は、別の契約で補いましょう。

 注意したい点は3つです。

 1つ目は、身元保証人とは違うことです。 任意後見人は「代理人」です。本人の借金を代わりに払う「保証人」ではありません。

 2つ目は、医療の同意です。 一般に、手術などへの同意は任意後見人の仕事に含まれないとされています。 どんな治療を望むか、元気なうちに書き残しておくと安心です。

 3つ目は、亡くなった後のことです。 本人が亡くなると、任意後見契約は終わります。 葬儀や家の片付けは、「死後事務委任契約」で別に頼んでおきます。亡くなった後の手続きを、信頼できる人に頼んでおく契約です。

 ここで知っておきたい国の考え方があります。 2018年、厚生労働省は「身元保証人がいないことだけを理由に入院を断るのは、医師法に反する」と通知しました。 「保証人がいないから入院できない」とあきらめる必要はありません。

6 2026年の法改正で、公的な支援も広がる

 2026年6月に改正社会福祉法が成立し、身寄りのない高齢者への公的な支援が広がります。ただし、まだ始まっていません。

 主な変更点は次のとおりです。

項目今の制度改正後
対象判断能力が十分でない人頼れる身寄りがいない高齢者も加わる
支援の中身日々のお金の管理など入院・入所の手続き支援、亡くなった後の事務支援も加わる
料金地域ごとに設定一定の人には無料または低額で提供

 この部分は、公布から2年以内に政令(国が出す細かいルール)で決める日に始まります。

 あわせて、成年後見制度を見直す改正民法も2026年6月に成立しました。 任意後見でも、代理人の順番をあらかじめ決めておけるようになるなど、使い勝手がよくなります。

 ただ、公的な支援が広がっても、「誰に、どこまで任せるか」を自分で決められるのは任意後見だけです。 2つは競い合うものではありません。組み合わせて使うものです。

7 ケースで考えてみましょう

 「公的支援+任意後見+死後事務委任」の三段構えが安心です。

 80歳でおひとりさまの田中さん。 社会福祉協議会に相談したところ、「今は元気なので、まだ利用の対象ではありません」と言われました。

 そこで、田中さんは次のように備えました。

・今は地域包括支援センターに相談しながら、見守り契約で月1回の電話連絡を受ける
・行政書士と任意後見契約を結び、将来のお金の管理と施設の契約を任せる
・死後事務委任契約で、葬儀と家の片付けを頼んでおく
・遺言書で、財産の行き先を決めておく

 障害のあるお子さんがいるご家庭なら、親ご自身の任意後見に加えて、お子さんを支える仕組みも考えておきましょう。 遺言書や家族信託などを組み合わせて、切れ目のない支えをつくることが大切です。

まとめ

 行政サービスで断られるのは、制度の役割に「線引き」があるからです。 その線の外側、つまり「代わりに契約する」「お金を管理する」を担えるのが任意後見です。

 ただし、任意後見は判断能力があるうちにしか結べません。 「断られた」と感じた今が、備えを始めるいちばんよいタイミングかもしれません。

  「役所で断られたけれど、次にどうすればいい?」
  「自分にはどの契約が必要なの?」

 そんな疑問からで大丈夫です。 行政書士として、あなたに合った支えの形を一緒に考えます。 どうぞお気軽にご相談ください。

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「行政書士下西照美事務所」

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下西照美

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