
「夫婦2人とも年をとったら、誰が手続きをしてくれるの?」
「ひとり暮らしで、頼れる親族がいない…」
「認知症になったら、預金や家のことはどうなるの?」
子供のいないご夫婦や、おひとりさまから、こんなご相談をよくいただきます。
子供がいれば、自然と子供が手続きを手伝ってくれることも多いでしょう。 でも、頼れる人がいないと、判断力が落ちたときに困ることがたくさんあります。 この記事では、任意後見を中心に、今からできる備えを順番に見ていきます。
1 「頼れる人がいない」と何が困る?
結論です。判断力が落ちると、お金や契約の手続きを自分ではできなくなります。代わりに動く人を、元気なうちに決めておくことが大切です。
判断力が落ちると、次のような場面で困ります。
| 場面 | 困ること |
|---|---|
| 銀行 | 預金の引き出しや解約ができない |
| 介護 | 介護サービスや施設入所の契約ができない |
| 住まい | 自宅の売却や賃貸の手続きができない |
| 相続 | 配偶者が亡くなっても、遺産の話し合いに参加できない |
子供がいれば、子供が家庭裁判所に申し立てたり、手続きを手伝ったりできます。 子供がいないと、その役目を担う人がいません。 だからこそ、自分で決めておく準備が必要です。
2 任意後見とは
任意後見は、「将来の手続き係」を自分で選んでおく契約です。
任意後見とは、元気なうちに「判断力が落ちたときに、代わりに手続きをしてくれる人」を自分で選び、契約しておく制度です。 選んだ人を「任意後見人」と呼びます。
契約は、公証役場で「公正証書」という公的な文書にして結びます。 判断力がしっかりしているうちでないと、契約はできません。 費用は、公証役場の手数料などで合わせて2万円ほどです。
たとえば、78歳でひとり暮らしのAさん。 信頼している姪と任意後見契約を結んでおけば、認知症になったとき、姪が預金の管理や施設の契約をしてくれます。
契約が動き出すのは、判断力が落ちて、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選んだときです。 任意後見監督人とは、任意後見人の仕事ぶりをチェックする人です。
3 夫婦の落とし穴は「共倒れ」
夫婦でお互いを任意後見人にするだけでは足りないことがあります。
子供のいないご夫婦なら、まずお互いを任意後見人にすることが考えられます。 いちばん身近で、気持ちもよくわかる相手です。
ただ、夫婦は年齢が近いものです。 夫82歳、妻80歳なら、2人とも同じ時期に判断力が落ちることもあります。 妻が任意後見人になる前に、妻自身が認知症になってしまうかもしれません。
そこで、誰に頼むかを比べてみましょう。
| 頼む相手 | よいところ | 心配なところ |
|---|---|---|
| 配偶者 | 気持ちがよくわかる | 同時に判断力が落ちることがある |
| 甥・姪 | 若く、長く頼める | 遠くに住んでいることがある |
| 専門家 | 手続きに慣れている | 毎月の報酬がかかる |
また、配偶者が先に亡くなると、残された方が親や兄弟姉妹、甥・姪と遺産の話し合いをすることがあります。 代理権目録(任意後見人に頼むことの一覧)に「遺産分割の協議」を入れておくと安心です。
4 おひとりさまの落とし穴は「気づく人がいない」
任意後見は、誰かが家庭裁判所に申し立てないと始まりません。
任意後見は、契約しただけでは動きません。 判断力が落ちたとき、家庭裁判所に申し立てる必要があります。 申し立てできるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見を引き受けた人です。
おひとりさまの場合、本人の変化に気づける人がいないことがあります。 任意後見を引き受けた人が気づかなければ、契約は眠ったままになります。
そこで役立つのが「見守り契約」です。 見守り契約とは、任意後見が始まるまで、定期的に電話や訪問で様子を確かめてもらう契約です。 たとえば、月に1回の電話と、3か月に1回の訪問を約束しておきます。 「最近、物忘れが増えたかな」と早めに気づいてもらえます。
5 任意後見では「亡くなったあと」は頼めない
任意後見は、本人が亡くなると終わります。亡くなったあとのことは、別の契約で備えます。
任意後見人ができるのは、生きている間の手続きです。 本人が亡くなると、契約は終わります。 葬儀や納骨、住まいの片付けなどは、任意後見では頼めません。
亡くなったあとのことは、「死後事務委任契約」で頼みます。 死後事務委任契約とは、亡くなったあとの手続きを、信頼できる人にお願いしておく契約です。 財産を誰に渡すかは、遺言書で決めておきます。
時期ごとに、備えをまとめると次のとおりです。
| 時期 | 備え | 頼めること |
|---|---|---|
| 元気なうち | 見守り契約 | 定期的な連絡・訪問 |
| 体が弱ったとき | 財産管理の委任契約 | 銀行の手続きの代行 |
| 判断力が落ちたとき | 任意後見契約 | 預金管理・施設の契約 |
| 亡くなったあと | 死後事務委任契約・遺言書 | 葬儀・片付け・財産の行き先 |
この4つをつなげておくと、切れ目なく支えてもらえます。
6 2026年の法改正で備えやすくなる
改正法では、「予備の任意後見人」や「申し立てを頼む人」を決められるようになります。
2026年6月に、民法などを改正する法律が成立しました。 任意後見について、主に次の点が変わります。
| 項目 | 今のルール | 改正後 |
|---|---|---|
| 予備の任意後見人 | 順番をつけて決められない | 「1番目がだめなら2番目」と決められる |
| 申し立てする人 | 本人・親族・引き受けた人など | 公正証書で指定した人も加わる |
| 契約の見直し | 一部だけ解除する決まりがない | 一部だけ解除できる |
予備の任意後見人を決めておけば、「妻がだめなら姪に」という備えができます。 申し立てる人を指定できれば、おひとりさまの「気づく人がいない」という心配も減らせます。
施行は、公布日(2026年6月24日)から2年6か月以内です。 ただし、判断力が落ちてからでは契約できません。 今のルールで契約しておき、施行後に内容を変えて新しいしくみを加えることもできます。
まとめ
子供のいないご夫婦やおひとりさまは、「誰が手続きをしてくれるか」を自分で決めておくことが大切です。
夫婦なら、お互いだけでなく、甥・姪や専門家も考えておきましょう。 おひとりさまなら、見守り契約で「気づいてくれる人」を確保しましょう。 亡くなったあとのことは、死後事務委任契約と遺言書で備えます。
「わが家には、どの組み合わせが合う?」と迷ったら、~お気軽にご相談ください。
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