
「任意後見人をお願いしたいけれど、お礼はいくら払えばいいの?」
「家族に頼めば、お金はかからないよね?」
「専門家に頼むと、毎月いくらかかるんだろう…」
こんな疑問をよくいただきます。
任意後見人とは、元気なうちに自分で選んでおく「将来、判断力が落ちたときに手続きを代わりにしてくれる人」です。 お金の話は聞きにくいものです。 でも、契約前に整理しておけば、あとで家族が困ることを防げます。
1 報酬は「2種類」ある
結論です。任意後見で払うお金は、「任意後見人への報酬」と「任意後見監督人への報酬」の2つです。
任意後見監督人とは、任意後見人の仕事ぶりをチェックする人です。 家庭裁判所がこの人を選んだ時から、任意後見契約が動き出します。
2つの報酬は、決まり方がまったく違います。
| 項目 | 任意後見人への報酬 | 任意後見監督人への報酬 |
|---|---|---|
| 誰が決める? | 本人と任意後見人の契約 | 家庭裁判所 |
| 無報酬にできる? | できる | 本人側では決められない |
| 誰が払う? | 本人の財産から | 本人の財産から |
任意後見人への報酬は、契約で決めます。 払うかどうか、いくら払うか、いつ払うかを、本人と任意後見人が話し合って決めます。
一方、任意後見監督人への報酬は、家庭裁判所が決めます。 任意後見監督人が申し立てると、裁判官が仕事の内容や財産の額を見て、金額を決めます(民法862条)。 本人や家族が「いくら」と決めることはできません。
2 家族に頼む場合
家族なら、無報酬にすることもできます。ただし、報酬をどうするかは契約書にはっきり書いておきましょう。
任意後見人の報酬は、契約で自由に決められます。 「0円」でも「月1万円」でもかまいません。
近くに住む家族が引き受けるなら、無報酬にすることも少なくありません。 ただ、遠方から通う場合は、交通費や時間の負担が大きくなります。 その場合は、実費とは別に報酬を決めておく例もあります。
契約書に書いておきたいのは、次の3つです。
| 書いておくこと | 例 |
|---|---|
| 報酬があるかないか | 無報酬とする |
| 金額と支払い時期 | 月額1万円を毎月末に支払う |
| 特別な仕事のときの報酬 | 自宅を売却したときは別に定める |
書いていないと、「言った・言わない」でもめやすくなります。 ほかのきょうだいが「なぜ兄だけお金をもらうの?」と疑問に思うこともあります。
3 専門家に頼む場合
専門家への報酬は、月2万円ほどからが一つの目安です。財産が多いと高くなります。
行政書士や司法書士などの専門家に頼む場合も、報酬は契約で決めます。 実際には、裁判所が選ぶ「法定後見人」の報酬の目安を参考にすることが多いようです。
大阪家庭裁判所が示している、成年後見人の報酬の目安は次のとおりです。 「管理財産額」とは、預貯金や株などの合計額のことです。
| 管理財産額 | 月額の目安 |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 2万円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 3万〜4万円 |
| 5,000万円超 | 5万〜6万円 |
ただし、これは法定後見の目安です。 任意後見の報酬がこの金額に決まるわけではありません。 事務所や頼む仕事の範囲によって変わります。
4 監督人の報酬は「誰に頼んでも」かかる
家族が無報酬で引き受けても、任意後見監督人への報酬はかかります。
任意後見監督人には、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることが多いです。 任意後見人本人や、その配偶者・兄弟姉妹などは監督人になれません。
大阪家庭裁判所の目安では、任意後見監督人の報酬は次のとおりです。
| 管理財産額 | 月額の目安 |
|---|---|
| 5,000万円以下 | 1万〜2万円 |
| 5,000万円超 | 2万5,000円〜3万円 |
この報酬は、任意後見監督人が家庭裁判所に申し立て、審判で決まります。 年に1回ほど、財産の状況報告とあわせて申し立てるのが一般的です。
なお、報酬の目安は家庭裁判所によって違うことがあります。 お住まいの地域の家庭裁判所の目安も確認しておくと安心です。
5 年間でいくらかかる?
月額の目安をもとに計算すると、1年でおよそ12万〜72万円です。
預貯金が3,000万円の方を例に、目安の金額で計算してみます。
| 項目 | 家族(無報酬) | 専門家 |
|---|---|---|
| 任意後見人 | 0円 | 月3万~4万円 |
| 任意後見監督人 | 月1万〜2万円 | 月1万〜2万円 |
| 月の合計 | 1万〜2万円 | 4万〜6万円 |
| 年の合計 | 12万〜24万円 | 48万〜72万円 |
| 10年続くと | 120万〜240万円 | 480万〜720万円 |
報酬が発生するのは、任意後見監督人が選ばれて契約が動き出してからです。 契約を結んだだけの段階では、まだ報酬はかかりません。
10年続くと、数百万円になることもあります。 生活費や介護費とあわせて、本人の財産でまかなえるか考えておきましょう。
6 どちらが向いている?
金額だけで決めず、「財産の内容」と「家族の状況」で選びましょう。
| ご家庭の状況 | 向いている頼み方 |
|---|---|
| 近くに信頼できる家族がいる | 家族 |
| 財産は自宅と預貯金くらい | 家族 |
| 子どもがいない・家族が遠方 | 専門家 |
| 賃貸アパートなど財産が複雑 | 専門家 |
専門家は、財産管理や報告書づくりに慣れています。 家族の手間や気持ちの負担を軽くできます。
一方、日々の見守りや細かな気持ちのくみ取りは、身近な家族のほうが得意なこともあります。
子どもがいないご夫婦なら、まずお互いを任意後見人にすることが考えられます。 ただ、夫婦は年齢が近いものです。 2人とも判断力が落ちる場合に備えて、甥・姪や専門家に頼む方法もあわせて考えておくと安心です。
7 契約前に確認したい3つのこと
「誰が」「いくら」「いつ」を、契約の前に整理しておきましょう。
1つ目は、誰に頼むかです。 家族か、専門家か、それぞれの負担と費用を比べます。
2つ目は、いくら払うかです。 任意後見人の報酬に加えて、任意後見監督人の報酬も見込んでおきます。
3つ目は、いつ払うかです。 毎月か、年1回かを契約書に書いておきます。
家族が無報酬で引き受ける場合も、報酬のルールを決めておくと安心です。 報酬のルールがあれば、いざというとき専門家の手を借りやすくなります。
まとめ
任意後見人の報酬は、契約で自由に決められます。 家族なら無報酬もできますし、専門家なら月2万円ほどからが目安です。
ただし、任意後見監督人への報酬は、誰に頼んでも家庭裁判所の決定でかかります。 目安は月1万〜3万円です。
「わが家の場合、どちらに頼むのがいい?」「報酬はどう書けばいい?」と迷ったら、~お気軽にご相談ください。
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