公正証書遺言の証人は誰に頼めばいい?

公正証書遺言の証人は誰に頼めばいい?

 「証人が2人って言われたけど、誰に頼めばいいの?」
 公正証書遺言をつくろうと決めた方が、最後につまずくのがここです。

 「妻に頼めばいい?」
 「子どもはダメなの?」
 「そもそも頼める人が思い浮かばない」

 令和7年(2025年)に全国で作成された遺言公正証書は12万3,891件(日本公証人連合会)。これだけの方が、同じ壁を越えています。順番に見ていきましょう。

1 証人は「見届け役」です

 公正証書遺言をつくるには、証人2人以上の立ち会いが法律で義務づけられています(民法969条)。日本公証人連合会によると、実務では証人が3人以上になることはなく、2人で作成されます。

 証人は、座っているだけの人ではありません。当日その場で、こんなことを確認します。

 遺言者が人違いでないか。内容を理解できる判断能力があるか。誰かに強制されていないか。公証人が書いた文章が、本人の話した内容と一致しているか。

 つまり「この遺言は本人の意思でつくられました」と外から裏づける役目。だから、中立な立場の人でないと務まりません。

2 なれない人が法律で決まっている

 ここが一番大事です。証人になる資格そのものは不要ですが、民法974条で「なれない人」が3つ定められています。

なれない人なぜダメなのか
未成年者判断能力が十分でないとみなされるため
推定相続人・受遺者、およびその配偶者と直系血族遺言の内容で自分の取り分が変わる立場で、利害関係が深いため
公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人公証人と近すぎて、中立性を保てないため

 「推定相続人」とは、いま亡くなったら相続人になる人のこと。「受遺者」は、遺言で財産をもらう人です。「直系血族」は親・祖父母・子・孫といった、まっすぐつながる血縁です。

 欠格にあたる人を証人にしてしまうと、遺言そのものが無効になるおそれがあります。部分的な修正ではすみません。ここだけは慎重に。

3 うちの場合はどうなる?

 結論から言うと、身近な家族はほぼ証人になれません。

 子どものいないご夫婦。配偶者は推定相続人なので、証人になれません。親も祖父母も亡くなっていれば、ご兄弟が推定相続人になり、やはり証人になれません。兄弟姉妹は直系血族ではないため本来なら証人になれる立場ですが、このケースは例外です。

 障害のあるお子さんに多く遺したい方。そのお子さんも、ほかのお子さんも推定相続人ですから、証人になれません。「お世話をお願いしている親族に財産を少し遺す」という内容にした場合、その方は受遺者となり、こちらも証人になれません。

 ご家族に未成年の方がいる場合。その方は年齢だけで証人になれません。

 ご家族が行方不明の場合。推定相続人であれば証人になれず、そもそも立ち会えません。

 おじ・おば・いとこは法律上は証人になれますが、相続関係によって欠格に触れる可能性が残ります。

 一番頼みやすい家族こそ、証人になれない。これが実情です。

4 頼める人がいないときの3つの道

心配いりません。手配の方法は用意されています。

頼み先費用の目安向いている方
友人・知人謝礼5,000円〜1万円程度(無報酬も可)信頼できる第三者が身近にいる方
公証役場で紹介1人あたり5,000円〜1万円程度頼める人がいない方、内容を知られたくない方
専門家に依頼立ち会いのみで1人1万〜3万円程度、遺言書作成とセットなら5万〜30万円程度内容のチェックも任せたい方

※費用は法律で決まっておらず、目安です。実際の額は依頼先にご確認ください。なお、これは公証役場に払う手数料とは別のお金です。

 多くの公証役場では、提携している方を手配してくれます。専門家(行政書士・弁護士・司法書士・税理士)には職務上の守秘義務があるため、内容を漏らされる心配が小さいのが強みです。

5 頼まれた側にも負担がある

 証人には、多少の手間と責任が伴います。

 まず、遺言書には証人の氏名・住所・職業・生年月日が記されるのが通例です。亡くなった後、相続人が謄本を取れば目にします。

 次に、遺言の有効性が裁判で争われると、証人が尋問に呼ばれることがあります。裁判所から正式な呼出状を受けたのに正当な理由なく出頭しない場合は、10万円以下の罰金または拘留(民事訴訟法193条)の対象になります。呼出を受ける前の段階で罰則が及ぶことはありません。

 秘密については、証人に罰則付きの法律上の守秘義務はありません。ただし日本公証人連合会は、証人は遺言者との黙示の合意により秘密保持義務を負うと説明しています。また、行政書士等の専門家なら職務上の守秘義務が課されており、現実的な選択肢になりえます。

6 当日の持ち物と流れ

 証人が用意するのは2つだけ。本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)と、認印です。実印は不要ですが、シャチハタは使えません。

 当日の所要時間は30分〜1時間ほど。内容が事前に公証人と打ち合わせ済みで、原案ができた状態であれば、公証人が読み上げ、遺言者と証人が確認し、署名・押印。最後に公証人が署名して完成です。

 体調により病院やご自宅での作成もできますが、その場合は証人2人もそこへ出向く必要があります。

 なお2025年10月からは電子公正証書やウェブ会議方式も使えるようになり、本人確認や電子署名の準備が必要になる場合があります。詳しくは公証役場の案内に従ってください。

まとめ

 証人選びの結論はシンプルです。財産をもらう側とその家族は外す。未成年も外す。残った中立な第三者か、公証役場の紹介か、専門家。この順で考えれば迷いません。

 「誰にも頼めない」は、遺言をあきらめる理由になりません。

 証人の手配も、欠格のチェックもまとめてお任せいただけます。ご家族の事情が複雑な方こそ、お気軽にご相談ください。

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「行政書士下西照美事務所」

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下西照美

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