
〜「元気なうちに、自分で選ぶ」これからの安心〜
「もし認知症になったら、お金の管理は誰がしてくれるの?」 「子供がいない。頼れる親族も遠くにいる」 「障害のある子を残して、私が先に判断できなくなったら……」
こんな不安を抱えていませんか。
判断する力が落ちると、銀行の手続きや施設との契約がひとりではできなくなります。 そのとき、あなたの代わりに動いてくれる人が必要です。
その「代わりの人」を元気なうちに自分で選んでおく仕組みが、任意後見制度です。 この記事では、仕組みから費用、2026年の法改正までをやさしく解説します。
1 判断力が落ちると、何が困るの?
先に結論です。判断力が落ちると、本人だけではお金や契約の手続きが難しくなります。
例えば、こんな場面です。
・銀行で定期預金を解約しようとしたら、窓口で止められた ・老人ホームに入りたいのに、契約の手続きが進まない ・自宅を売って施設の費用にしたいのに、売れない
判断力が落ちた方の預金が引き出せなくなることは、実際によくあります。 ご本人の財産を守るための対応ですが、家族にとっては大きな壁になります。
家族がいても、原則として勝手に代わりに手続きすることはできません。 おひとりさまなら、なおさら困ってしまいますね。
2 任意後見制度ってどんな仕組み?
元気なうちに「将来の代理人」と「任せる内容」を契約で決めておく制度です。
「任意後見(にんいこうけん)」とは、ご自身で選んだ人に、将来のお金の管理や契約を任せる制度です。 「任意」は「自分の意思で」という意味です。
この約束を「任意後見契約」といいます。 ルールは3つあります。
1つ目は、契約は必ず公正証書で作ることです。 「公正証書」とは、公証役場で公証人(法律の専門家)が作る、信用度の高い書類です。
2つ目は、契約を結べるのは判断力があるうちだけ、という点です。
3つ目は、効力が始まるのは判断力が落ちて⤵から、という点です。 家庭裁判所が「任意後見監督人」を選んだときにスタートします。 「任意後見監督人」とは、代理人(任意後見人)がきちんと仕事をしているかをチェックする人です。
たとえば、75歳でおひとりさまの佐藤さん。 信頼できる姪と契約を結んでおけば、将来は姪が預金の管理や施設の契約をしてくれます。
3 法定後見とは何が違うの?
いちばんの違いは「代理人を自分で選べるかどうか」です。
判断力が落ちてから家庭裁判所が代理人を選ぶ制度を「法定後見」といいます。 2つを比べてみましょう。
| 項目 | 任意後見 | 法定後見 |
|---|---|---|
| 始めるタイミング | 元気なうちに契約 | 判断力が落ちてから申立て |
| 代理人を選ぶ人 | 自分 | 家庭裁判所 |
| 任せる内容 | 契約で自由に決める | 法律と裁判所が決める |
| 本人の契約を取り消す権利(取消権) | なし | あり |
「取消権」とは、本人が結んだ不利な契約を、あとから取り消せる権利です。 任意後見人にはこの権利がありません。 悪質な訪問販売が心配な方は、この点も知っておきましょう。
4 3つの使い方から選べる
結論です。任意後見は「いつから支えてもらうか」で3つのタイプに分かれます。
| タイプ | 内容 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 将来型 | 任意後見契約だけ結んでおく | 今は元気で、身近に見守ってくれる人がいる |
| 移行型 | 元気なうちから財産管理を任せ、判断力が落ちたら任意後見へ切り替える | 体が不自由で、銀行に行くのが大変 |
| 即効型 | 契約してすぐに任意後見をスタートする | すでに判断力が少し落ち始めている |
おひとりさまには「移行型」がよく選ばれます。 あわせて「見守り契約」を結ぶと安心です。 定期的に電話や訪問をしてもらい、判断力が落ちていないかを確認してもらう契約です。
5 費用はどれくらい?
作るときに約2万円、スタート後は監督人への報酬が毎月かかります。
公証役場の手数料は、2025年10月1日に改定されました。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 任意後見契約の作成(公証役場) | 1契約13,000円 |
| 登記嘱託手数料 | 1,600円 |
| 登記用の収入印紙 | 2,600円 |
| 任意後見監督人の報酬(財産5,000万円以下) | 月1万〜2万円 |
| 任意後見監督人の報酬(財産5,000万円超) | 月2万5千〜3万円 |
これとは別に、正本・謄本の代金がかかります。 移行型にするなら、財産管理の委任契約の手数料もかかります。 監督人の報酬は家庭裁判所が決め、ご本人の財産から支払われます。
月2万円なら、1年で24万円です。 長く続く費用なので、あらかじめ見込んでおきましょう。
6 任意後見だけではカバーできないこと
任意後見は「生きている間」の制度です。亡くなった後のことは、別の準備が必要です。
本人が亡くなると、任意後見契約は終わります。 葬儀や納骨、病院への支払い、家の片付けは頼めません。
そこで、次の準備を組み合わせます。
| 準備 | 役割 |
|---|---|
| 見守り契約 | 元気なうちの見守り |
| 財産管理委任契約 | 体が不自由になったときのお金の管理 |
| 任意後見契約 | 判断力が落ちたときの支え |
| 死後事務委任契約 | 葬儀・支払い・片付けなど、亡くなった後の手続き |
| 遺言書 | 財産を誰に渡すか |
「死後事務委任契約」とは、亡くなった後の手続きを、信頼できる人に頼んでおく契約です。
障害のあるお子さんがいるご家庭では、親ご自身の任意後見に加えて、お子さんを支える仕組みも考えておきましょう。 遺言書や家族信託、お子さんのための法定後見などを組み合わせるのが大切です。
7 2026年の法改正で、もっと使いやすく
2026年6月に改正法が成立し、任意後見がより柔軟になります。ただし、まだ施行(スタート)前です。
改正法は2026年6月24日に公布されました。 成年後見制度の見直しは、公布から2年6か月以内にスタートします。
主な変更点は次のとおりです。
| 今の制度 | 改正後 |
|---|---|
| 任意後見監督人が必ず必要 | 明らかに必要ないと家庭裁判所が認めれば、裁判所が直接チェックできる |
| 代理人が先に亡くなったら、次の人を決める仕組みがない | 「1番目はこの人、次はこの人」と順番を決めておける |
| スタートの申立てができるのは親族や代理人予定者だけ | 本人が公正証書で指定した人も申し立てられる |
| 法定後見が始まると、任意後見契約は終わる | 補助が始まっても、任意後見契約を続けられる |
「補助」とは、改正後の法定後見の中心になる仕組みです。 必要なことだけを支援してもらえます。
おひとりさまにとって、うれしい改正です。 たとえば、よく訪ねてくれる友人を「申立てをする人」に指定しておけます。 そうすれば、親族がいなくてもスタートの手続きが進みます。
施行日より前に結んだ任意後見契約にも、改正後の法律が適用されます。 ですから、施行を待たずに今から準備しておいて大丈夫です。
まとめ
任意後見制度は、「将来の自分を支えてくれる人」を自分で選べる制度です。 ただし、契約できるのは判断力があるうちだけです。
見守り契約や死後事務委任契約、遺言書と組み合わせれば、老後から亡くなった後まで、切れ目なく安心を準備できます。
「誰に頼めばいいか分からない」 「うちの場合はどのタイプがいいの?」
そんな疑問からで大丈夫です。 行政書士として、あなたらしい老後の備えを一緒に考えます。 どうぞお気軽にご相談ください。
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