任意後見制度は「ひどい」?デメリットと失敗しない対策

任意後見制度は「ひどい」?デメリットと失敗しない対策

 「任意後見はひどい制度だ」
 インターネットで、こんな声を見かけて不安になった方もいるかもしれません。

 「お金ばかりかかるのでは?」
 「頼んだ人に財産を使い込まれたら?」

 任意後見にも弱点はあります。 ただ、その多くは契約の作り方で防げます。 この記事では、よくあるデメリットと、その対策を順番に見ていきます。

1 「ひどい」と言われるのは、仕組みを知らずに使うから

 「ひどい」と言われる理由の多くは、制度そのものの欠陥ではありません。 契約の中身や準備が足りないことが原因です。

 任意後見とは、元気なうちに「将来この人に任せたい」という相手と結んでおく契約のことです。 判断力が落ちたあと、家庭裁判所が任意後見監督人を選ぶと、契約の効力が始まります。 任意後見監督人とは、後見人の仕事をチェックする人のことです。

 2025年に任意後見監督人の選任が申し立てられたのは、881件でした(最高裁判所「成年後見関係事件の概況」)。 まだ利用は多くない制度です。 そのぶん、仕組みをよく知らないまま契約してしまい、あとで困る方もいます。

2 知っておきたい5つのデメリット

 主なデメリットは次の5つです。

デメリットどういうことか
① 監督人の報酬がかかる家族が無報酬で引き受けても、監督人の報酬は必ずかかる
② 取消権がない本人が結んだ悪質な契約を、後見人の判断で取り消せない
③ 亡くなると終わる本人が亡くなると、契約もそこで終わる
④ あとから内容を足せない判断力が落ちてからでは、任せる内容を追加できない
⑤ 始まらないことがある誰も家庭裁判所に申立てをしないと、効力が生じない

 ①について、監督人の報酬は家庭裁判所が決めます。 大阪家庭裁判所の目安では、管理する財産が5,000万円以下なら月1万〜2万円です。 10年続けば、120万〜240万円になります。

 ③は、任意後見が「委任契約」の一つだからです。 委任契約は、頼んだ人が亡くなると終わります(民法653条)。 葬儀や病院代の支払いなどは、任意後見人の仕事に入りません。

3 特に注意したいのは「始まらない」こと

 いちばん怖いのは、⑤の「始まらない」ことです。 本人の判断力が落ちても、申立てをしないまま放っておかれるケースがあるのです。

 任意後見には、元気なうちから財産管理を任せる契約を一緒に結ぶ形があります。 これを「移行型」といいます。 判断力が落ちたら、任意後見に切り替える前提の形です。

 ところが、判断力が落ちても切り替えず、前からの契約で財産管理を続ける人がいます。 こうなると、任意後見監督人によるチェックが入りません。 この問題は、国の「成年後見制度利用促進基本計画」でも指摘されています。

 例えば、一人暮らしの80歳の女性が、知人と移行型の契約を結んだとします。 数年後に女性が認知症になりました。 それでも知人は申立てをせず、チェックのないまま預金の管理を続けます。 これでは、使い込みがあっても誰も気づけません。

4 失敗しないための5つの対策

 デメリットには、それぞれ対策があります。

デメリット対策
① 監督人の報酬年金や預金でまかなえるか、契約前に計算しておく
② 取消権がない見守り契約を結び、クーリング・オフなどの手続きを代理権目録に入れる
③ 亡くなると終わる死後事務委任契約と遺言書を一緒に作る
④ あとから足せない不動産の売却なども含め、必要な内容を最初に入れておく
⑤ 始まらない申立ての時期と義務を契約書に書いておく

 「代理権目録」とは、任意後見人に任せる仕事の一覧表のことです。 任意後見人ができるのは、この一覧表に書いたことだけです。

 「死後事務委任契約」とは、亡くなった後の手続きを頼んでおく契約のことです。 葬儀や納骨、病院代の支払いなどを任せられます。

 ⑤の対策としては、たとえば「判断力が落ちたら、受任者は速やかに申立てをする」と契約書に書いておく方法があります。 申立ては、本人の配偶者や4親等内の親族(甥・姪やいとこなど)もできます。 信頼できる家族に、契約していることを伝えておくのも大切です。

5 法改正で、使いやすさが変わります

 2026年6月24日に、成年後見制度を見直す改正法が公布されました。 施行は公布から2年6か月以内です。

 任意後見に関わる主な変更点は2つです。
 1つ目は、任意後見人の順番を決めておけるようになることです。 たとえば「まず妻に、妻が無理なら甥に」という契約ができるようになります。 子どものいない夫婦にとっては、「共倒れ」への大きな備えになります。

 2つ目は、法定後見との関係です。 今は、任意後見が始まった後に法定後見が始まると、任意後見契約が終わってしまいます。 改正後は、法定後見の「補助」が始まっても、任意後見契約を続けられるようになります。

 ただし、どちらもまだ施行前です。 今契約する場合は、今の法律に合わせて内容を作る必要があります。

まとめ

 任意後見は「ひどい」制度ではありません。 ただ、弱点を知らずに契約すると、思わぬところで困ることがあります。 費用の計算、死後の準備、申立ての取り決め。 この3つを押さえておけば、失敗はかなり防げます。

 当事務所では、任意後見契約に加えて、見守り契約や死後事務委任契約もまとめてご提案しています。 「うちの場合はどうすれば?」と迷ったら、お気軽にご相談ください。

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「行政書士下西照美事務所」

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下西照美

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