
〜「何から始めればいいの?」に、順番どおりにお答えします〜
「任意後見がいいのは分かった。でも、手続きが難しそう」
「公証役場なんて行ったことがない」
「書類は何がいるの?費用はいくら?」
こんな不安をお持ちではありませんか。
任意後見契約は、元気なうちに「将来の任意後見人(代理人)」を自分で決めておく契約です。任意後見人とは、判断力が落ちたときに、あなたに代わってお金の管理や契約をする人のことです。
この記事では、任意後見契約に係る相談から公正証書ができるまでを、6つのステップでやさしく解説します。
1 まず全体の流れをつかみましょう
先に結論です。契約は「決める→準備する→公証役場で作る→登記される」の順に進みます。
任意後見契約は、必ず公正証書で作ると法律で決まっています。 「公正証書」とは、公証役場で公証人(法律の専門家)が作る、信用度の高い書類です。
| ステップ | やること | 主にする人 |
|---|---|---|
| Step1 | 受任者(将来の任意後見人)を決める | ご本人 |
| Step2 | 任せる内容(代理権目録)を決める | ご本人と受任者 |
| Step3 | 公証役場を予約し、原案を送る | ご本人(専門家に頼むことも可) |
| Step4 | 必要書類を集める | ご本人と受任者 |
| Step5 | 作成当日、公証人と面談して署名する | ご本人と受任者 |
| Step6 | 法務局に登記される | 公証人 |
「受任者(じゅにんしゃ)」とは、将来あなたの任意後見人になる約束をした人のことです。正式には「任意後見受任者」といい、契約の効力が始まると「任意後見人」に呼び方が変わります。
2 ステップ1 誰に頼むかを決める
信頼できる成人なら、親族でも友人でも専門家でも頼めます。ただし、なれない人もいます。
受任者には、甥・姪や友人、行政書士などの専門家もなれます。
ただし、法律では次の人は受任者になれないとされています。
・破産者や行方不明者
・本人に裁判を起こしたことがある人と、その配偶者・親子
・家庭裁判所で法定代理人などを辞めさせられたことがある人
・不正な行為など、任意後見人にふさわしくない事情がある人
例えば「何年も連絡が取れない弟」は、受任者には選べません。 身近に頼める人がいなければ、専門家や社会福祉協議会などの法人に頼む方法もあります。
3 ステップ2 任せる内容を決める
任せたいことを「代理権目録(だいりけんもくろく)」という一覧表にまとめます。
代理権目録とは、「任意後見人にしてもらうこと」を書いたリストです。 書き方は法務省令で2種類と決まっています。
よく入れる項目は、預金の管理、年金の受け取り、介護や施設の契約、入院の手続きなどです。
もちろん、範囲をしぼることもできます。 たとえば、こんな書き方です。
・「ただし、自宅の売却は含まない」
・「〇〇銀行の普通預金から、月10万円まで払い戻せる」
「自宅だけは守りたい」という想いも、こうして形にできます。
4 ステップ3、4 公証役場の予約と書類集め
公証役場と内容をすり合わせながら、必要書類をそろえます。
公証役場は、全国どこのものでも利用できます。 予約をして原案を送り、公証人と文言を整えていきます。
必要書類は次のとおりです。
| 誰の書類か | 必要なもの |
|---|---|
| ご本人 | 印鑑登録証明書と実印(または顔写真付きの身分証明書と認印)、戸籍謄本または抄本、住民票 |
| 受任者 | 印鑑登録証明書と実印(または顔写真付きの身分証明書と認印)、住民票 |
| 受任者が法人のとき | 代表者の印鑑証明書と代表者印、資格証明書 |
印鑑登録証明書などは、発行から3か月以内のものに限られます。 早く取りすぎないように注意しましょう。
相談から完成までは、1〜2か月ほどかかるのが目安です。
5 ステップ5、6 作成当日と登記
当日は公証人がご本人と直接話して意思を確認します。完成後の登記は公証人がしてくれます。
当日は、公証人が「内容を理解しているか」「自分の意思で受任者を選んでいるか」を確かめます。 ご家族が代わりに答えるのではなく、ご本人の言葉で話すことが大切です。
病気などで公証役場に行けなくても大丈夫です。 公証人が自宅や病院、施設まで来てくれます。
完成すると、公証人が東京法務局へ登記を頼みます。 これを「登記嘱託(とうきしょくたく)」といいます。
登記されると、将来は「登記事項証明書」が取れるようになります。 任意後見人が銀行などで「私が任意後見人です」と証明するための書類です。いわば国が発行する委任状ですね。
6 費用はいくらかかる?
公証役場へ支払う費用は、基本の形で2万円前後です。
2025年10月1日に手数料が改定されました。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 公正証書の作成手数料 | 1契約13,000円(3枚を超えると1枚ごとに300円を加算) |
| 法務局に納める収入印紙 | 2,600円 |
| 登記嘱託手数料 | 1,600円 |
| 正本・謄本の代金 | 紙は1枚300円、電子データは1通2,500円 |
| 書留郵便料 | 重さによって違う |
| 出張してもらう場合 | 病床執務加算6,500円と日当・交通費を加算 |
次のような場合は、費用が増えます。
・財産管理の委任契約もあわせて結ぶ(移行型)と、その分の手数料がかかる
・受任者が2人なら、原則2契約分の手数料になる
専門家に原案づくりを頼む場合は、その報酬が別にかかります。
7 契約した後は?いざというときの手続き
契約しただけでは、まだ効力はありません。判断能力が落ちたときに、家庭裁判所への申立てが必要です。
判断能力が落ちてきたら、家庭裁判所に「任意後見監督人」を選んでもらいます。 任意後見人の仕事ぶりをチェックする人です。選ばれた時点で、契約の効力が始まります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申し立てられる人 | ご本人、配偶者、4親等内の親族、受任者 |
| 申立先 | ご本人の住所地の家庭裁判所 |
| 費用 | 収入印紙800円、登記手数料1,400円、郵便切手 |
| 主な書類 | 申立書、戸籍謄本、公正証書の写し、登記事項証明書、診断書、財産の資料 |
本人以外が申し立てる場合は、原則として本人の同意が必要です。
8 障害のあるお子さんがいるご家庭へ
お子さんが未成年のうちなら、親が代わりに任意後見契約を結べる場合があります。
日本公証人連合会によると、次の方法が認められています。
・家庭裁判所で「特別代理人」(親の代わりに子の立場に立つ人)を選んでもらう
・受任者にならない方の親と特別代理人が、子を代理して契約する
ただし、効力が始まるのは、お子さんが成年になってからです。 親なき後の備えとして、早めに検討したい方法です。
9 最近の法改正もチェック
公正証書のデジタル化が始まり、成年後見制度の見直しも決まりました。
2025年10月1日、改正公証人法が施行されました。 法務大臣が指定する公証人が作る公正証書は、原則として電子データ(PDF)で作られます。 正本や謄本も、紙か電子データかを選べるようになりました。 ただし、任意後見契約は、登記の手続きに使うため謄本1通は必ず紙で作られます(日本公証人連合会)。
2026年6月には、任意後見の見直しを含む改正民法が成立しました。 施行は公布から2年6か月以内の予定です。 細かい手続きが変わる可能性があるので、最新の情報を確認しながら進めましょう。
まとめ
任意後見契約の手続きは、「決める→準備する→公証役場で作る→登記される」の4段階です。
いちばん大切なのは、「誰に、何を任せるか」をじっくり考えることです。 書類集めや公証役場とのやり取りは、専門家に任せることもできます。
「誰に頼めばいいか迷っている」
「代理権目録の書き方が分からない」
そんな疑問からで大丈夫です。 行政書士として、原案づくりから公証役場との打ち合わせまでお手伝いします。 どうぞお気軽にご相談ください。
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