
「公正証書遺言って、いくらかかるの?」
終活のお話をしていると、必ず出てくる質問です。
「安心なのは分かる。でも高いんでしょう?」
「役場に行く前に何を用意すればいいの?」
「うちは子どもがいないけど、そもそも作れるの?」
漠然と不安なままだと、手が止まってしまいます。ここでは金額と書類を、具体的な数字で見ていきましょう。
1 まずは「公正証書遺言」の正体を知る
公正証書遺言とは、公証人という法律の専門家(公証役場にいる国の任命を受けた人)に、遺言の内容を書面にしてもらう方式の遺言です。
つくるには、証人2名の立ち会いが必要です。原本は公証役場が保管します。だから紛失や改ざんの心配がありません。
日本公証人連合会の公表では、令和7年(2025年)に全国で作成された遺言公正証書は12万3,891件。令和6年は12万8,378件でした。平成28年は10万5,350件でしたから、この10年で確実に増えています。
「特別な人がやること」ではなくなってきているんです。
2 費用は法律で決まっている
ここが一番の安心ポイント。公証役場に払う手数料は、「公証人手数料令」という政令で全国一律に決まっています。お店ごとに値段が違う、ということはありません。
しかも、相談自体は無料です。
基本の手数料は、財産の額で決まります(公証人手数料令第9条別表)。
| 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円超〜100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超〜500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 49,000円 |
なお、この表は2025年(令和7年)10月1日の改正後のものです。約25年ぶりの見直しで、50万円以下の枠が新しくできた一方、200万円超の部分は数千円ずつ上がりました。
3 「財産の合計」ではなく「もらう人ごと」
ここを勘違いされる方がとても多いです。
手数料は、財産をもらう人ごとに価額を計算し、それぞれの手数料を足し算します。もらう人が増えれば、その分だけ手数料も増えます。
そして、財産の合計が1億円以下のときは、13,000円が上乗せされます。これを「遺言加算」と呼びます。
計算してみましょう。財産6,000万円を、妻に4,000万円、長男に2,000万円遺す場合。
- 妻の分 33,000円
- 長男の分 26,000円
- 遺言加算 13,000円
- 合計 72,000円
ほかに、原本が紙で3枚を超えると1枚につき300円。手元に渡される正本・謄本(内容を写した控え)は、電子データなら1通2,500円、書面なら1枚300円です。
体調が悪くて役場に行けない場合、公証人が病院や施設に出向いてくれます。ただし手数料が50%増しになることがあり、加えて日当(1日2万円、4時間以内なら1万円)と交通費がかかります。
証人が身近にいない方は、公証役場で紹介してもらえます。謝礼は法律で決まっておらず、1人あたり5,000円〜1万円程度が目安とされています(実際の額は役場にご確認ください)。
4 必要書類は「6つの引き出し」
日本公証人連合会が挙げている資料は、次のとおりです。
| 何のため | 用意するもの |
|---|---|
| 本人確認 | 3か月以内の印鑑登録証明書。または運転免許証・マイナンバーカード等の顔写真付き身分証 |
| 家族関係の確認 | 遺言者と相続人の続柄が分かる戸籍謄本・除籍謄本 |
| 相続人以外に遺す場合 | その人の住民票など住所が分かるもの。法人なら登記事項証明書 |
| 不動産がある場合 | 登記事項証明書と、固定資産評価証明書または納税通知書の課税明細書 |
| 預貯金がある場合 | 通帳またはそのコピー |
| 証人を自分で頼む場合 | 証人予定者の氏名・住所・生年月日のメモ |
事案によって追加を求められることもあります。最寄りの役場に一度電話するのが確実です。
5 ご家族の事情がある方へ
子どものいないご夫婦は、相続人が兄弟姉妹や甥・姪になります。続柄を示す戸籍をたどる必要があるため、書類が数十枚になることも。時間に余裕を持ってください。
障害のあるお子さんがいる方は、遺言の中で遺言執行者(内容を実行する担当者)を決めておくと、手続きが止まりません。
未成年や行方不明の方がご家族にいる場合、遺言がないと遺産分割の話し合いが必要になり、代理人の選任など別の手続きが発生しがちです。遺言があれば、その話し合いそのものを省けることがあります。
6 自筆との比較
| 項目 | 自筆+法務局保管 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 費用 | 保管申請1通3,900円 | 数万円〜(財産額と人数で変動) |
| 形式不備のリスク | 自分で書くため残る | 公証人が関与 |
| 証人 | 不要 | 2名必要 |
| 家庭裁判所の検認 | 不要 | 不要 |
安さで選ぶなら法務局保管。確実さで選ぶなら公正証書遺言です。
7 今日からできること
ステップは3つだけ。財産を紙に書き出す。誰に何を遺すか決める。役場に電話して見積もりを聞く。
2025年10月からはウェブ会議での作成もできるようになりました(パソコンとカメラが必要で、スマホ・タブレットは使えません)。足を運ぶ負担も下がっています。
数万円で、ご家族の何年分もの手間と不安が消えます。どこから手をつけるか迷っておられるなら、お気軽にご相談ください。
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