任意後見契約の「受任者」とは?任意後見人との違いを説明

任意後見契約の「受任者」とは?任意後見人との違いを説明

 任意後見契約の書類を見ると、「受任者」という言葉が出てきます。「任意後見人」とは別の人なの? と迷う方は少なくありません。

 「姪に頼んだのに、書類では任意後見人になっていない」
 「受任者のままで、銀行の手続きはできるの?」
 「子供がいないから、頼んだ人が先に亡くなったらどうしよう」

 最初に答えをお伝えします。受任者と任意後見人は、同じ人です。違うのは「時期」だけです。この記事では、その違いを順番にご説明します。

1 受任者とは「まだ出番前の後見人」

 受任者は、任意後見を引き受けた人です。ただし、まだ仕事が始まっていない段階の呼び名です。

 法律での意味を見てみましょう。任意後見契約は、判断力が十分でなくなったときに、生活や財産の管理を任せる契約です。この契約で頼まれた人のうち、任意後見監督人(後見人の仕事をチェックする人)が選ばれる前の人を「任意後見受任者」といいます。選ばれた後は「任意後見人」と呼びます(任意後見契約法第2条)。

 呼び名が切り替わるきっかけは、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだときです。契約の効力も、このときに生じます(任意後見契約法第2条)。

 例えば、子供のいない75歳のBさんが、姪と契約したとします。

  • 75歳で契約 → 姪は「受任者」
  • 82歳で物忘れが進み、監督人が選ばれる → 姪は「任意後見人」

 同じ姪のまま、立場だけが変わるわけです。

2 受任者と任意後見人の違いを表で比べる

 一番の違いは「代わりに手続きできるかどうか」です。受任者には、まだその権限がありません。

比べる点受任者任意後見人
時期契約してから監督人が選ばれるまで任意後見監督人が選ばれた後
契約の効力まだ生じていない生じている
代わりに手続きする権限なし契約で決めた範囲であり
チェックする人いない任意後見監督人
契約をやめるときいつでもできる(公証人の認証を受けた書面が必要)正当な理由があり、家庭裁判所が許可したときだけ

 契約をやめる方法の違いは、法律に定められています(任意後見契約法第9条)。

 受任者の段階では、銀行で預金を下ろすといった代わりの手続きはできません。この時期から手伝いが必要なら、別に「委任契約(財産管理の契約)」を結んでおきましょう。

3 受任者にはどんな役割がある?

 受任者の大切な役割は、「始めどき」を見極めることです。

 本人の判断力が落ちてきたら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。申し立てができるのは、本人、配偶者、4親等以内の親族、それに受任者です(任意後見契約法第4条第1項)。

 本人以外が申し立てるときは、原則として本人の同意が必要です。ただし、本人が意思を伝えられない状態なら、同意は要りません(任意後見契約法第4条第3項)。

 おひとりさまの場合、申し立ててくれる親族がいないこともあります。そのときは受任者が動かないと、契約がいつまでも始まりません。日ごろから様子を見に来てもらう「見守り契約」と組み合わせると安心です。

4 受任者になれない人もいる

 家族や友人でも受任者になれます。ただ、法律で「ふさわしくない」とされる人は除かれます。

ふさわしくないとされる人身近な例
本人と裁判で争っている人、または争ったことがある人と、その配偶者・親・子など本人に貸したお金を返せと訴えた甥
不正な行為や、著しく素行の悪い点など、後見人に向かない事情がある人本人のお金を使い込んだことがある親族

 こうした人が受任者だと、家庭裁判所は監督人を選びません。つまり、契約が始まらないのです(任意後見契約法第4条第1項第3号)。

 また、受任者の配偶者、親・子など、兄弟姉妹は、監督人にはなれません(任意後見契約法第5条)。身内同士でチェックし合うことを防ぐためです。

5 改正で受任者の決め方が変わります

 2026年6月24日に、民法などの改正法が公布されました。受任者まわりのルールが、より使いやすくなります。

 主な変更点は3つです

変わる点今のルール改正後
監督監督人が必ず必要明らかに必要がなければ、家庭裁判所が直接チェックできる
受任者が先に亡くなったとき次の人を決めておく仕組みがない「1番目は姪、2番目は専門家」のように順番を決められる(予備的受任者の指定)
申し立てできる人本人、親族、受任者に限られる本人が公正証書で指定した人も申し立てできる

 施行は、公布から2年6か月以内です。施行日より前に結んだ契約にも、原則として改正後のルールが適用されます(法務省)。

 ただし、施行までは今のルールで契約します。順番を決めた契約は、まだ作れません。

6 受任者を選ぶときのチェックポイント

 受任者は「長く付き合える人」を選ぶことが大切です。

 チェックしたい点は次の3つです。

  • 年齢:本人が80歳で受任者が78歳だと、受任者も高齢になります。10歳以上若い人が安心です。
  • 距離:月に1回は会える場所に住んでいるかどうか。
  • 信頼:お金の管理を任せられ、記録をきちんと残せる人かどうか。

 障害のある子の親は、親自身が受任者になる方法もあります。ただ、親が先に亡くなる場合への備えも必要です。改正後の「順番を決める仕組み」も視野に入れて、計画を立てましょう。

まとめ

 受任者は「出番前の任意後見人」です。監督人が選ばれた日から、任意後見人として動き始めます。

 誰を受任者にするか。いつ、誰が申し立てるか。受任者の段階で手伝ってもらう契約が必要か。決めることはいくつもあります。

 当事務所では、ライフプランの整理から契約書の案づくりまでお手伝いしています。受任者選びで迷ったら、お気軽にご相談ください。

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「行政書士下西照美事務所」

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下西照美

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