遺言書の書き方を例文つきでやさしく解説

遺言書の書き方を例文つきでやさしく解説

 〜「無効にならない」ための基本ルール〜

 「遺言書って、何をどう書けばいいの?」 「間違えたら無効になるって本当?」

 こんな声をよく聞きます。

 遺言書は、あなたの想いを家族に届ける「最後の手紙」です。 でも、法律のルールを守らないと、せっかく書いても使えません。

 子供のいないご夫婦は、特に大切です。 障害のあるお子さんがいるご家庭や、相続人に未成年・行方不明の方がいるご家庭も同じです。 遺言書があるかどうかで、残された家族の苦労が大きく変わります。

 この記事では、例文を使いながら、書き方をやさしく解説します。

1 遺言書がないと、何が困るの?

 先に結論です。遺言書がないと、相続人全員での話し合いが必要になります。

 この話し合いを「遺産分割協議」といいます。 「誰が何をもらうか」を決める話し合いです。

 全員が同意しないと、預金の解約も家の名義変更もできません。

 相続人の中に、未成年の方や行方不明の方、判断が難しい方がいたらどうでしょう。 家庭裁判所で「代わりの人」を選んでもらう必要があり、時間も手間もかかります。

 遺言書で「誰に何を」を決めておけば、この話し合いは原則いりません。

2 遺言書には主に2つの種類がある

 結論です。よく使われるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。

項目自筆証書遺言公正証書遺言
作る人自分で手書き公証人(法律の専門家)が作成
証人いらない2人必要
無効になるリスク形式のミスに注意ほぼなし
検認必要(法務局に預けた場合はいらない)いらない

 「検認(けんにん)」とは、亡くなった後に家庭裁判所で遺言書の中身を確認してもらう手続きです。

 公正証書遺言の証人には、未成年者や相続人になる予定の人などはなれません。

3 自筆証書遺言の4つの基本ルール

 結論です。「本文・日付・氏名を自分の手で書き、印を押す」。これが基本です。

 1つ目は、本文をすべて手書きすることです。 2つ目は、日付を「令和8年10月1日」のように、何日か分かる形で書くことです。 3つ目は、氏名を書くことです。 4つ目は、印鑑を押すことです。

 ただし、財産の一覧表(財産目録)はルールがゆるやかになりました。 2019年1月13日から、パソコンで作ったものや通帳のコピーでもよくなったのです。 その場合は、目録のすべてのページに署名と押印が必要です。

4 例文① まずは基本の形

 結論です。「誰に」「何を」を、はっきり書きましょう。

遺言書

遺言者 山田太郎は、次のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻 山田花子(昭和25年5月1日生)に相続させる。

令和8年10月1日

東京都〇〇区〇〇町1丁目2番3号
遺言者 山田太郎 ㊞

 生年月日を書くのは、人違いを防ぐためです。

 言葉の使い分けにも注意しましょう。 相続人には「相続させる」と書きます。 相続人ではない人(お世話になった友人など)には「遺贈する」と書きます。

5 例文② 「もしも」に備える予備的遺言

 結論です。財産を受け取る人が先に亡くなった場合の「次の人」まで決めておきましょう。

 こうした書き方を「予備的遺言」といいます。 財産をあげたい人が先に亡くなっていたときに備えて、次の受取人を決めておく遺言です。

 子供のいないご夫婦には、特に必要です。

第2条 妻 山田花子が遺言者より先に、または同時に死亡したときは、前条の財産を、遺言者の姪 鈴木さくら(平成2年3月3日生)に遺贈する。

 姪は相続人にならないことが多いため、ここでは「遺贈する」を使っています。

6 例文③ 手続きをする人を決めておく

 「遺言執行者」を決めておくと、手続きがスムーズに進みます。

 「遺言執行者」とは、遺言の内容を実際に実現する人です。 預金の解約や名義変更などを担当します。

 高齢の配偶者がひとりで銀行や役所を回るのは大変ですよね。 信頼できる親族や専門家を指定しておくと安心です。 なお、未成年者は遺言執行者になれません。

第3条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
住所 〇〇県〇〇市〇〇町4番5号
行政書士 〇〇〇〇(昭和50年1月1日生)

7 例文④ 障害のあるお子さんの「親なき後」に備える

 財産の分け方だけでなく、「誰が支えるか」という想いも書き残しましょう。

 障害のある長男と、その姉の長女がいる家庭を例にします。

第1条 遺言者は、〇〇銀行の預金のうち1,000万円を、長男 〇〇に相続させる。
第2条 遺言者は、前条以外の一切の財産を、長女 〇〇に相続させる。
(付言事項) 長女へ。弟の見守りを、どうかよろしくお願いします。

 「付言事項(ふげんじこう)」とは、家族へのメッセージ欄のことです。 法的な効力はありませんが、想いを伝えることで争いを防ぐ力があります。

 長男がご自身で財産を管理するのが難しい場合もあります。 そのときは、成年後見や家族信託を組み合わせることも考えましょう。

8 よくある失敗例

 小さなミスひとつで、遺言書が無効になることがあります。

よくあるミスどうなる?正しい書き方
日付を「10月吉日」と書く無効「令和8年10月1日」と書く
本文をパソコンで作る無効本文は手書き(目録だけパソコン可)
夫婦2人で1枚の遺言書に書く無効1人1通ずつ作る
押印を忘れる無効必ず押す(今の法律)
「自宅を妻に」とだけ書くどの不動産か分からず手続きが止まるおそれ登記簿のとおりに所在・地番を書く

9 法務局に預ければ、さらに安心

 手書きの遺言書は、法務局に預けるのがおすすめです。

 「自筆証書遺言書保管制度」は、手書きの遺言書を法務局が預かってくれる制度です。 2020年7月10日に始まりました。

 手数料は1通3,900円です。

 メリットは3つあります。 1つ目は、なくしたり書き換えられたりする心配がないこと。 2つ目は、家庭裁判所での検認がいらないこと。 3つ目は、亡くなった後、あらかじめ指定した人に法務局から通知が届くことです。

 「遺言書が見つからない」という事態を防げます。

10 2026年の法改正「デジタル遺言」

 2026年6月17日、遺言のルールを変える改正民法が成立しました。ただし、まだ施行(スタート)前です。

改正の内容施行予定
自筆証書遺言の押印が不要になる2027年(令和9年)6月までに
保管証書遺言(デジタル遺言)の新設2029年(令和11年)6月までに

 「保管証書遺言」とは、パソコンやスマホで作った遺言を法務局が保管する新しい方式です。

 ここで注意してください。 今、手書きで遺言書を作るなら、押印は必要です。 押印を忘れると無効になってしまいます。

まとめ

 遺言書は「誰に」「何を」を、正しい形で書くことが大切です。

 予備的遺言や遺言執行者、付言事項まで書いておけば、家族の負担はぐっと軽くなります。 相続人に未成年や行方不明の方がいる場合も、話し合いの手間を減らせます。

 「うちの場合はどう書けばいいの?」
 「この書き方で本当に大丈夫?」

 そんな疑問からで大丈夫です。 行政書士として、あなたの想いがしっかり届く遺言書づくりをお手伝いします。 どうぞお気軽にご相談ください。

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「行政書士下西照美事務所」

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下西照美

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