
〜「書類がそろわず当日できない」を防ぐために〜
「任意後見契約を結ぼうと決めた。でも、何を用意すればいいの?」
「戸籍謄本?住民票?印鑑証明書?どれが必要か分からない」
「せっかく集めたのに、使えないと言われたら困る」
こんな不安はありませんか。
任意後見契約は、公証役場で公正証書にして結びます。 そのため、本人であることを確かめる書類がいくつか必要です。
書類の数自体は、それほど多くありません。 ただ、「期限」や「組み合わせ」に、ちょっとした落とし穴があります。
この記事では、必要書類の一覧と、準備のときに気をつけたい点をやさしく解説します。
1 なぜ書類の準備でつまずくの?
つまずく原因は、多くの場合「書類の期限切れ」と「準備の遅れ」です。
公証役場で使う印鑑登録証明書には、「発行から3か月以内」という決まりがあります。
例えば、こんなケースです。
・張り切って早めに取ったら、打ち合わせが長引いて期限が切れていた
・本人の体調が悪くなり、市役所に行けなくなった
・受任者が遠方に住んでいて、書類がなかなか届かない
「受任者(じゅにんしゃ)」とは、将来あなたの任意後見人になる約束をした人です。 任意後見人とは、判断力が落ちたときに、あなたに代わってお金の管理や契約をする人のことです。
書類は「いつ取るか」まで考えて準備するのがコツです。
2 本人(お願いする人)が用意する書類
本人については、「本人確認の書類」「戸籍謄本」「住民票」の3つが基本です。
日本公証人連合会では、本人について次の書類を案内しています。
| 書類 | ポイント |
|---|---|
| 本人確認の書類 | 印鑑登録証明書+実印(または運転免許証・マイナンバーカードなど顔写真付きの身分証明書+認印) |
| 戸籍謄本(または抄本) | 本人の身分関係を確認するため |
| 住民票 | 本人の住所を確認するため |
「戸籍謄本」は家族全員が載った戸籍の写し、「抄本」は本人の部分だけの写しです。
住民票の住所は、実際に暮らしている場所と同じであることが原則です。 引っ越しをしたら、14日以内に役所へ届け出ることが法律で決まっています(住民基本台帳法第22条、第23条)。
施設に入ったときも、住民票を移す必要がないか確認しておきましょう。 住所の届出がまだなら、公証役場へ行く前に済ませておくと安心です。
3 受任者(引き受ける人)が用意する書類
受任者は「本人確認の書類」と「住民票」の2つです。戸籍謄本はいりません。
| 受任者 | 必要な書類 |
|---|---|
| 個人(甥・姪・友人・専門家など) | 本人確認の書類(第2章と同じ組み合わせ)+住民票 |
| 法人(社会福祉法人など) | 代表者の印鑑証明書+代表者印、資格証明書(法人の代表者であることの証明) |
受任者が遠くに住んでいる場合は、早めに声をかけておきましょう。 「来月の打ち合わせまでに住民票をお願いね」と伝えておくだけで、準備はぐっと楽になります。
4 本人確認の書類は2つのパターンから選ぶ
「実印+印鑑登録証明書」か「顔写真付きの身分証明書+認印」のどちらかです。
| パターン | 用意するもの | こんな人に向いている |
|---|---|---|
| A | 印鑑登録証明書と実印 | 免許証を返納した、マイナンバーカードを持っていない |
| B | 運転免許証やマイナンバーカードなどと認印 | 印鑑登録をしていない |
「実印」とは、市区町村に登録したハンコのことです。 「認印」は、登録していない普段使いのハンコです。
80代で免許証を返納した方も多いですよね。 その場合は、マイナンバーカードかパターンAを使います。
ただし、公証役場によって案内が少し違います。 たとえば、顔写真付きの身分証明書を2種類求める役場もあります。 写真のない保険証などと組み合わせる場合もあります。 予約のときに、必ず確認しておきましょう。
5 期限と取り方のコツ
書類は「打ち合わせの日程が決まってから」取るのが安全です。
日本公証人連合会では、次の書類を「発行から3か月以内のもの」に限るとしています。
| 誰の書類か | 3か月以内のものに限られる書類 |
|---|---|
| 個人(本人・受任者) | 印鑑登録証明書 |
| 法人(受任者が法人のとき) | 代表者の資格証明書、代表者の印鑑証明書、法人の登記簿謄本(登記事項証明書) |
例えば、作成日が12月10日なら、9月10日より後に発行されたものが目安です。
戸籍謄本の取り方は、2024年3月1日から便利になりました。 戸籍法の改正で「広域交付」が始まったのです。 本籍地が遠くても、近くの市区町村の窓口で取れる制度です。
ただし、注意点が3つあります。
・郵送や代理人による請求はできない(本人や配偶者などが窓口に行く)
・顔写真付きの身分証明書の提示が必要
・抄本(一部だけの写し)は取れない(謄本は取れる)
本人が窓口に行けないときは、本籍地の役所に郵送で請求する方法もあります。
6 書類以外に準備しておきたいこと
「何を任せたいか」のメモがあると、打ち合わせがスムーズに進みます。
任意後見契約では、任意後見人に任せることを「代理権目録(だいりけんもくろく)」にまとめます。 任意後見人にしてもらうことを書いた一覧表です。
その材料として、次のメモがあると便利です。
・取引のある銀行や証券会社の名前
・自宅などの不動産があるか
・年金の種類、毎月の大きな支払い(施設代や家賃など)
・「自宅は売らないでほしい」などの希望
あわせて遺言書も公正証書で作るなら、そちらでは不動産の登記事項証明書や通帳のコピーなどが必要になります(日本公証人連合会)。 同じ日に作れるように、まとめて準備しておくと効率的です。
7 いちばん大切な準備は「判断力があるうち」に
書類がそろっていても、判断力が足りないと契約できません。
任意後見契約は、本人に契約内容を理解する力があるときにしか結べません。
日本公証人連合会のQ&Aでは、判断力がやや落ちている場合について、次のように説明されています。 認知症だからといって、すぐに判断力がないとされるわけではない。本人や周りの人の説明、医師の診断などを参考に、公証人が判断する、というものです。
判断力がないと判断されれば、任意後見契約は結べません。 その場合は、家庭裁判所が代理人を選ぶ「法定後見」を使うことになります。
物忘れが気になり始めたら、早めに医師に相談しておきましょう。 診断書を用意できると安心です。
8 障害のあるお子さん・未成年の家族がいる場合
お子さんが未成年のうちなら、親が代わりに任意後見契約を結んでおけます(日本公証人連合会)。
例えば、父が「障害のある長男の、将来の任意後見人になる」場合です。 まず家庭裁判所に「特別代理人」を選んでもらいます。 この契約のときだけ、長男の立場に立ってくれる人です。 そのうえで、母と特別代理人が長男に代わり、父と契約を結びます。
ただし、効力が始まるのは長男が18歳になってからです。 未成年の間は、親が親権で守っているからです。
いちばんのメリットは、「誰に支えてもらうか」を親が選んでおけることです。 成年になってから本人に契約する力がなければ、家庭裁判所が後見人を選ぶ「法定後見」しか方法がありません。 親なき後の支え手を、親自身が決めておけるのです。
家庭裁判所での手続きは、契約のときと18歳以降の2回あります。 早めに専門家に相談しましょう。
まとめ
任意後見契約の必要書類は、本人が3種類、受任者が2種類です。 大切なのは、次の3つです。
・印鑑登録証明書は日程が決まってから取る(3か月以内)
・本人確認の書類の組み合わせを、公証役場に確認する
・判断力があるうちに準備を始める
「どの書類をいつ取ればいいか分からない」 「本人が役所に行けないけれど大丈夫?」
そんな疑問からで大丈夫です。 行政書士として、書類集めから公証役場との打ち合わせまでお手伝いします。 どうぞお気軽にご相談ください。
「うちはどちらが向いているのかしら」という段階で構いません。どうぞお気軽にご相談ください。
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