
「前の家庭の子には、知らせなくていいですよね?」
再婚されている方から、よくいただく質問です。
「20年会っていない。もう他人では?」
「今の妻と子だけで分けたい」
「認知した子がいるが、家族は知らない」
お気持ちは分かります。ただ、法律の答えははっきりしています。
前妻のお子さんも、認知したお子さんも、今の家庭のお子さんとまったく同じ相続人です。 ここから出発しましょう。
1 「元配偶者」と「その子」は別扱い
まず整理が必要なのは、離婚で切れるものと切れないものです。
離婚すると、元配偶者は他人になります。相続権はありません。これは分かりやすい。
でも、親子関係は離婚では切れません。前妻さんが親権を持ち、姓が変わり、何十年会っていなくても、法律上の子であることは変わりません。
だから前妻のお子さんは、第1順位の相続人です。今の配偶者との間のお子さんと、同じ順位。同じ法定相続分。同じ遺留分(最低限保障される取り分)。
※後妻さんの連れ子は別です。養子縁組をしていなければ相続人になりません。ここは逆に見落とされがちな点です。
2 婚外子の相続分は、2013年に変わりました
制度の背景をひとつ。
かつて民法900条4号ただし書は、嫡出でない子(法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子)の相続分を、嫡出子の2分の1と定めていました。
これが平成25年(2013年)9月4日、最高裁で違憲と判断されます。同年12月5日に民法が改正され、11日に公布・施行。相続分は同等になりました。
適用されるのは平成25年9月5日以後に開始した相続です。ただし法務省は、平成13年7月1日以後に開始した相続についても、遺産分割が終わっているなど確定した法律関係を除いて、同等に扱われると考えられると説明しています。
古い知識のまま「半分でいい」と考えていると、計算が狂います。
3 実際に、いくらになるのか
財産6,000万円。相続人は現在の妻、現在の子1人、前妻の子1人。この場合の内訳です。
| 相続人 | 法定相続分 | 金額 | 遺留分 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 現在の妻 | 1/2 | 3,000万円 | 1/4 | 1,500万円 |
| 現在の子 | 1/4 | 1,500万円 | 1/8 | 750万円 |
| 前妻の子 | 1/4 | 1,500万円 | 1/8 | 750万円 |
遺言で「全財産を妻に」と書いても、お子さんたちは750万円ずつ請求できます。しかも2019年7月1日施行の改正で、遺留分の請求は金銭の支払いを求める形に一本化されました(遺留分侵害額請求)。
つまり、現金が必要になります。 自宅しかない家庭では、売却を迫られる事態もあり得ます。
4 遺言がないと、何が起きるか
遺産分割協議は相続人全員でやります。1人でも欠ければ無効。
ということは、今の奥さまが、前妻のお子さんを探し出し、連絡を取り、実印をもらう必要があります。
相手にとっては突然の手紙です。感情が絡まないほうが不思議でしょう。ここで話がこじれ、家庭裁判所の調停に進むケースは珍しくありません。
遺言書があれば、この協議そのものが不要になります。奥さまが頭を下げに行く場面を、あらかじめ消せるのです。
5 遺言で認知するという選択
生前は言い出せない。でも自分の子として遺したい。そういう方のために、遺言による認知が認められています(民法781条2項)。
認知の効力は出生の時にさかのぼり(民法784条)、その子は相続人になります。相続分は他のお子さんと同じです。
ここで絶対に外せないのが、遺言執行者です。認知は届出をして初めて戸籍に反映されます。そして遺言による認知の届出は、遺言執行者が就職の日から10日以内に行うと定められています(戸籍法64条)。
指定がなければ、家庭裁判所に選任してもらうことになり、その分だけ手続きが遅れます。認知と遺言執行者の指定は、必ずセットで。
なお対象によって条件があります。成年のお子さんなら本人の承諾、胎児なら母の承諾が必要です。
6 4つの備え
| 備え | 中身 | 効果 |
|---|---|---|
| 遺言書を書く | 分け方を指定 | 協議そのものを不要にする |
| 遺留分を計算して配分 | 最低限の取り分を先に確保 | 請求される事態を避ける |
| 生命保険を使う | 受取人を指定 | 遺留分の支払い原資をつくる |
| 遺言執行者を指定 | 実行の担当者 | 認知の届出、名義変更を任せる |
そして、もうひとつ。付言事項という、法的効力のない「あとがき」を添える方法があります。なぜこう分けたのか。どんな思いがあったのか。
法律では動かせない部分を動かすのは、この数行だったりします。
まとめ
前妻のお子さんも認知したお子さんも、相続人です。この事実は変えられません。
変えられるのは、残された方々が顔を合わせて交渉する状況をつくるか、書面ですべて済ませるか。その一点です。
言いにくいご事情こそ、書面に落としておく価値があります。誰にも相談できずにいらっしゃるなら、お気軽にご相談ください。
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